2012年4月17日火曜日

Nov 08, 2011:フロンティアコーポ・メディック:So-netブログ


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1.外来追加負担、「低所得者は半額」案 厚労省検討
2.厚労省、「専門医」の認定改善へ
3.診断・治療もできる「特定看護師」導入へ 厚労省が原案
4.ES細胞で初の治療へ 肝臓病の0歳児 国立成育医療研
5.子宮筋腫・肉腫 術前PET診断法 良性確認で子宮温存の可能性も
6.尿酸や尿の酸性化はメタボのリスク 人間ドック7万人の健診解析
7.高齢者の尊厳大切に 特養ホームで「胃ろう」全廃/沖縄南城市
8.「医師不眠不休」でも対応できず、2035年の埼玉県医療
9.厚労省、看護師特定能力認証制度の骨子案を発表
10.終末期医療に関する本人の意思確認カードを作りました
11.癌化学療法時の感染症、CFPM非感受性菌に注意
12.トラネキサム酸投与で前立腺切除術中の輸血リスクが4割減
13.バレット食道が食道腺癌になるリスクは従来推定より低い
14.現在・元ヘビースモーカーへの低線量CT肺がんスクリーニングで、COPD検出可能
15.PCI後の早期ステント血栓症リスク、遺伝的要因と臨床要因で予測可能
16.高齢者は痩せると脳卒中になりやすい【医師レポート】
17.胸部X線スクリーニング検査、肺癌死を減らす効果見られず、PLCO試験
18.体重増加を促すホルモン濃度、減量成功後も高いまま
19.乾癬へのbriakinumab、メトトレキサートより高い有効性
20.Heart Stent Patients Get Personalized Care: Guidelines
21.Light 'promising' in cancer fight
22.Doctor trials laser treatment to change eye colour
23.Newer birth control pills again tied to blood clots
24.平成22年(2010)医療施設(動態)調査・病院報告の概況
25.H5N1発生国および人での発症事例(2011年11月2日現在)
26.公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について
27.プレスリリース
1) 遺伝子改変なしにクローンマウスの出生率を10倍高める技術を開発
2) NIH study finds stroke risk factors may lead to cognitive problems
3) NIH researchers design a light therapy that targets and destroys cancer cells in mice
4) FDA approves Erbitux to treat late-stage head and neck cancer
28.Other Topics
1) 地球接近の小惑星、NASAが撮影画像を公開
2) いまさら聞けない、SSLサーバ証明書とルート証明書の関係
3) TPPは「国論を二分する」ほどの問題ではない
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1.外来追加負担、「低所得者は半額」案 厚労省検討
日本経済新聞社2011年11月8日

外来患者に1回100円の追加負担を求める「受診時定額負担」制度について、厚生労働省が低所得者の負担を半額の50円程度に抑える案を検討していることが7日、分かった。定額負担制度は、長期療養患者の負担を軽減するための財源にする予定だが、低所得者の負担が重いとの批判があった。低所得者への配慮は野田佳彦首相も国会で表明していた。
 一般世帯の定額負担は100円にしたまま、住民税非課税世帯の負担だけを半分の50円にする案が有力。初診と再診で負担額を変える案や、50円以外の金額に設定する案なども検討しているもようだ。
 厚労省は案がまとまれば来年の通常国会に関連法案を提出し、2015年ごろまでの実施を目指す。低所得者への配慮を強めれば、その分だけ国や健康保険などの負担が重くなる面もある。
 ただ、定額負担に対しては、患者が診察を受けにくくなるとして日本医師会などが反対している。「弱者」である患者に負担を求めるべきではないとして、与野党にも慎重派が多い。低所得者への配慮で理解が広がるかは微妙だ。
 厚労省は所得などに応じて医療費の患者負担に上限を定める「高額療養費制度」を見直し、年収600万円以下の中間層を中心に負担を軽減する方針。この財源として、外来患者への定額負担を検討している。

2.厚労省、「専門医」の認定改善へ
産経新聞社2011年11月8日

 医師が、特定の診療科でより高度な知識や経験を持つ場合に名乗ることが認められる「専門医」制度を見直そうと、厚生労働省が検討を始めた。それぞれの学会が認定主体で、基準も診療科ごとにばらつきがある今の制度から、新たに統一基準をつくって第三者機関が認定する仕組みに改める方針。
 医師の質の底上げを図り、診療科や地域ごとの偏りも解消するのが狙い。厚労省は医療関係者による検討会を設置し、10月に初会合を開いた。平成26年度の運用開始を目指し、24年度末にも報告書をまとめる。
 現在は、医師が一定期間研修を受けたり、手術経験数を重ねたりして試験に合格すれば、各学会に「専門医」と認定される。厚労省は、日本医学放射線学会の「放射線科専門医」や、日本消化器病学会の「消化器病専門医」など57学会の55分野について、認定を受ければ「専門医」と名乗ることを認めている。
 だが、研修期間や手術件数などの基準は各学会が独自に決めているため「診療科ごとで医師の質にも違いが生じていた。しっかりとした養成プログラムもなく、いつのまにか『専門医』になれるケースも多い」(厚労省幹部)という。

3.診断・治療もできる「特定看護師」導入へ 厚労省が原案
朝日新聞社2011年11月8日

 医師がしている診断や治療の一部ができる「特定看護師」の導入を議論してきた厚生労働省は7日、作業部会で制度の原案を示した。法律を改正し、床ずれの治療や脱水した場合の点滴開始の判断など「特定の医行為」を認証を受けた看護師ができるようにする。医療の質や患者の満足度の向上につながると期待される。
 この日の部会で示された原案では、5年以上の実務経験がある看護師が、国指定の研修を受け、国の試験に受かると「特定能力認証」を受ける。医師の事前の指示に従えば、自らの判断でできるようになる。養成課程は、高齢者の慢性的な病気など幅広い2年と、皮膚・排泄ケアなど分野を限る8カ月コースを想定している。

4.ES細胞で初の治療へ 肝臓病の0歳児 国立成育医療研
朝日新聞社2011年11月8日

ES細胞で肝機能回復の仕組み
 重症の肝臓病で治療法がなく、肝移植も難しい0歳児に、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)からつくった肝細胞を移植する治療を、国立成育医療研究センター(東京都)が計画している。ES細胞による治療は国内では例がなく、肝臓病への応用は世界初とみられる。研究センターは3年後をめどに、倫理委員会の承認を受けて臨床試験に臨む。
 受精卵からつくられるES細胞には、生命の萌芽を壊すことになるという倫理面の問題やがん化の危険性があり、研究レベルに制限され、一部の認められた研究機関でしか扱えない。しかし、研究が進んで海外では臨床試験も始まっていることなどから、ほかに治療法がない難病患者に限って臨床研究の対象として、厚生労働省は先月、指針づくりを始めたところだった。
 治療するのは先天性代謝異常症で、肝臓が有毒なアンモニアを分解できない新生児。血中の濃度が高くなると脳に障害が出る。10万人に1人程度の割合で発症し、生存率は10~20%。

5.子宮筋腫・肉腫 術前PET診断法 良性確認で子宮温存の可能性も
産経新聞社2011年11月8日

FDGーPET(左)とFESーPET(右)の比較。上段は、FDG(ブドウ糖)を取り込み、FES(女性ホルモン)を取り込まない悪性の子宮肉腫、下段はFDGもFESも取り込んでいるため、良性の子宮筋腫と判別できる (福井大学医学部付属病院提供)
 子宮にできた腫瘍が良性の筋腫か、悪性の肉腫かを手術前に正確に診断する、PETを使った臨床研究が盛んだ。手術前に良悪の診断がつけば、良性であれば子宮を温存する可能性が広がり、出産を希望する女性に朗報だ。
難しい術前診断
 子宮筋腫は、30代以上の女性4~5人に1人、40代以上の女性3人に1人程度が持っているとされる病気。自覚症状がない場合もあり、貧血や月経過多など生活に支障がなければ、経過観察する。女性ホルモンを取り込み大きくなるため、閉経すれば自然に縮小する。一方、肉腫は筋腫とよく似ているが、女性ホルモンと関係なく大きくなり、他の臓器に転移する。治療を必要とする子宮筋腫患者の1%程度とまれな病気。しかし、有効な化学療法、放射線療法が確立していないため、疑いがある場合は積極的に子宮全摘出術が行われる。
 かつては、出産を終えた経産婦が主な手術対象者だったが、近年の晩婚化と少子高齢化で子宮温存を望む患者が増加、術前の良悪診断が重要視されるようになった。良性であれば、ホルモン療法や筋腫核だけを取り除く手術などで子宮を温存できるからだ。
 福井大学医学部の吉田好雄准教授は「握りこぶし以上の子宮筋腫のある人も、手術をするより様子を見たいと希望する人が多い。筋腫と思われる腫瘍の中に肉腫が一定の割合で存在するのは事実。だが、子宮全摘術の76%が不適切に実施されているという報告もあり、術前の正確な診断が重要」と話す。
子宮手術減らす
 現在の良悪診断の中心的役割を果たしているのはMRI(磁気共鳴画像装置)。典型的な子宮筋腫と肉腫の判別ができるが、変形筋腫などの場合は判断に迷い、10%程度が「疑いあり」に分類されるという。
一方、がん細胞が通常の細胞より多くのブドウ糖を取り込む性質を利用したFDG-PET検査は、生理周期などによって「擬陽性」となることもある。
 そのため、福井大学では、筋腫が女性ホルモンを取り込み、肉腫では取り込まない性質を利用した新しい検査薬を開発した。女性ホルモンによく似た放射性検査薬「FES」の安定供給に成功したため、MRIでもFDG-PETでも「肉腫の疑いあり」となった24人の患者に臨床試験を実施。その結果、22人で正しく良悪を判別し、6月の米国核医学会で腫瘍診断基準部の最高賞を受賞した。
 吉田准教授は「一部の肉腫には女性ホルモンを取り込む性質のものもあり、その場合は判別できない。しかし、FDGとFESの集積割合を比較することで、良悪判断の精度を上げ、不要な手術を減らすことができる」としている。
悪性腫瘍の性質を使うFLT診断も
 PETを使った子宮筋腫と子宮肉腫の術前診断法としては、悪性腫瘍が良性腫瘍よりもDNA(遺伝子)の複製が盛んな性質を利用した「FLT-PET」の臨床試験を先端医療センター(神戸市中央区)が実施している。29日にシカゴで開催される北米放射線学会に成果を発表する予定だ。
 研究グループの山根登茂彦・分子イメージング研究グループ主任研究員は「術前診断のニーズは高く、継続して診断の可能性を探りたい」としている。
【用語解説】PET
 陽電子放射断層撮影装置。CTやMRIが単に組織を画像でみるのに対し、PETは体の代謝を利用して、体内に注入した薬剤の集まり具合(細胞の性質)をみながら病巣を判断する。FDG-PET検査は昨年4月から、胃がんを除くがんの再発転移や、良悪判断で保険が適用されるようになった。

6.尿酸や尿の酸性化はメタボのリスク 人間ドック7万人の健診解析
産経新聞社2011年11月8日

尿酸値と尿pHの値によるメタボ発症率
 血液に含まれる尿酸の量が多い人や尿が強い酸性の人は、生活習慣病につながるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)になりやすい-。虎の門病院健康管理センター(東京都港区)の原茂子・前部長らが20年間の約7万人に上るデータを解析した結果、尿酸や尿の酸性化はメタボのリスクになる経過が初めて統計的手法で明らかになった。7月に米科学誌「メタボリズム」(オンライン版)に掲載され、国際的にも注目されている。
放置しておくと
 定期健診のデータを一覧して、尿酸値については痛風などの症状を持つ人以外はあまり気にとめない。治療ガイドラインでは、血清中の尿酸値が1デシリットル当たり7ミリグラムを超えると高尿酸血症とされる。
 都内に住む41歳の男性は人間ドックで健診を受けたとき、尿酸値が9~8ミリグラムと高く、尿pHが5~6と酸性が強かったが、自覚症状がないので放置していた。ところが、尿酸値の上昇とともに翌年の健診で体重の増加、中性脂肪の急上昇が確認され、高血圧も重なってメタボと診断された。
 50歳の別の男性は尿酸値だけが高かったが、4年後には中性脂肪の増加と高血圧の危険因子が見つかった。
 こうしたメタボと尿酸の関連を明確にするため、原氏らは昭和60年から20年間、同病院の人間ドックを受診した20歳以上の6万9049人(平均46・5歳、男性4万8744人)の初診時のデータを統計解析した。
 その結果、尿酸値の増加や酸性尿がメタボの悪化と深くかかわっていたことが判明した。尿酸値と尿pHの高低を4グループに分けた図に示したように、男性では高尿酸と酸性尿を併せ持つ人は相乗効果で発症率が13・4%と最も高く、尿酸値、尿pHがともに正常の人(4・4%)の3倍もあった。女性はメタボになる人がもともと少ないが、高尿酸の影響が約4倍と男性を上回った。
早期であれば
 さらに、初診時のBMI(体格指数=体重『キロ』を身長『メートル』の2乗で割った数値)の値が肥満症と診断されない25未満の体重が少ない人を選択して5年間追跡したところ、尿酸が最高値のグループは低いグループに比べて、男性で3・7倍、女性で8・7倍もメタボになっており、悪影響の程度が統計的に示された。
 原氏は「メタボが増加する中で、尿酸の管理を重視すべき時期に来ている。自覚症状がないだけに、検査値を予測因子としてみることが大切」と指摘。早期であれば肉類やアルコールを控え、野菜を取るなどの食事や運動による生活習慣の改善で尿酸値を下げ、酸性尿を防ぐことを勧めている。
 ■尿酸値をメタボの予測因子に
 尿酸は、痛風、尿路結石の原因として知られてきたが、最近では高血圧、動脈硬化、2型糖尿病、慢性腎臓病など生活習慣病の主要な原因として改めて注目されている。治療開始の尿酸値も検討されており、男女の性差も分かってきた。
 メタボの発症メカニズムは、高尿酸が高率に高血圧を起こすとともに、脂肪細胞から分泌される動脈硬化などの悪玉物質を増加させる。さらに、酸性尿が重なると血糖値を下げるインスリンの働きが抑えられやすくなり、それにより再度酸性化が進むという悪循環が関係しているとされる。

7.高齢者の尊厳大切に 特養ホームで「胃ろう」全廃/沖縄南城市
琉球新報2011年11月8日

全員が常食を食べている特別養護老人ホーム「しらゆりの園」の昼食風景=南城市知念
 特別養護老人ホーム(特養)で胃に直接流動食を流し込む「胃ろう」など医療的処置が必要な高齢者が増える中、南城市知念の特養「しらゆりの園」(友名孝子理事長)が口から食べる摂食訓練で胃ろうを全廃し、入所者全員が健康な人と同じ食事をしている。入所者の重度化が進む特養で全員が胃ろうや刻み食、ミキサー食でなく、口から常食を食べているのは全国でも例がないという。
 これまでも高齢者の尊厳を守るため、日中おむつゼロに取り組んできたしらゆりの園で、入所者全員が口から普通食を食べるという常食移行の取り組みが始まったのは今年1月。当時、同施設の入所者70人のうち、常食は41人(58・8%)、12人は刻み食、5人はゼリー食、3人はミキサー食、9人は胃ろうだった。
 職員たちは入所者の口腔アセスメントを実施し、かむ力、水を飲む力などを確認。「人間は使わないと忘れてしまう」という国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授の理論を実践した。
 水分が少なくなると意識レベルが下がるので、水分摂取量を増やし意識レベルを上げる。その上でするめや棒付きのあめなどで口腔機能を向上させ、かむ回数を増やした。
 こぼしたり、時間がかかったりするが、次第に普通の食事ができる人が増え、5月22日に全員が口から常食を食べた。仲村渠紀希介護課長は「刻み食や胃ろうの時より時間がかかることは確か。それでも、目で見て味わい、口から食べることが人間として一番大切なのでは」と話す。
 友名理事長は「胃ろうやミキサー食が当たり前だったが、本当にこれでいいのかという疑問から始まった。もう一度口から食べさせてあげたいという家族は多く、介護職が専門性を発揮すれば、胃ろうははずせる」とほかの施設に取り組みが広がることを期待した。

8.「医師不眠不休」でも対応できず、2035年の埼玉県医療
東大医科研・井元氏が報告、人口動態・医師の高齢化踏まえ試算
M3 2011年11月7日


チーズのいびき

 11月5日に開催された「現場からの医療改革推進協議会」主催の第6回シンポジウムの「医師不足」のセッションで、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター准教授の井元清哉氏は、2010年と2035年の人口や医師数を基にシミュレーション、医学部定員が現状のまま推移すれば、ほとんどの都道府県で医師の労働負荷は悪化するという推計を報告した。
 例えば、人口の高齢化に伴い増加するのが、後期高齢者の看取りの機会。医師一人当たりが診る後期高齢者死亡数は、44都道府県で悪化。特に埼玉、千葉、神奈川、愛知、奈良、大阪、兵庫の各府県で悪化が著しく、悪化しないのは鳥取、佐賀、鹿児島の3県のみ。
 井元氏は、2010年度の医学部定員8846人が今後も続くという前提で試算、「一見すれば、人口1000人当たりの医師数は、2035年にはOECD平均並みの3.2人になり、日本の医療の状況は良くなるように見える。しかし、実際には、医師一人当たりが診る死亡者数、後期高齢者死亡数は、ほとんどの都道府県で増加、医師の負担は増える」と指摘、医学部新設など何らかの対策が必要だとした。
 国立社会保障・人口問題研究所の人口動態シミュレーションによれば、日本の人口は2010年の1.27億人から2035年には1.1億人に13%減少。このシミュレーションと同様の考え方で試算すれば、医師数は約25%増える。その結果、単純計算では、人口1000人当たりの医師数は2010年の2.2人から2035年に3.2人に増加。しかし、総死亡数、後期高齢者の死亡数は増加し、医療ニーズが増大する一方、医師の高齢化も進み、高齢医師では1週当たりの勤務時間は減少するため、医師一人当たりの労働負荷は高まる、と井元氏は試算。
 埼玉、医師1人当たりの「看取り数」急増
 井元氏が例に挙げたのが埼玉県。総死亡数は、2035年には2010年の1.79倍、後期高齢者死亡数は2.75倍にそれぞれ増加。
 一方、医師数は単純計算では1.33倍になるが、医師の高齢化も進む。過去の調査結果から、1週間の労働時間は、20代医師では男性85時間、女性78時間だが、60代医師男性58時間、70代女性医師40時間などと減少するとした。
 これらのデータを踏まえて試算すると、埼玉県では、2035年には、2010年に比べ、医師一人当たりが診る高齢者数(医師の労働1000時間当たり1.127倍)、死亡数(同1.401倍)、後期高齢者死亡数(2.152倍)はいずれも悪化することが分かった。特に後期高齢者死亡数の悪化が著しい。
 さらに、井元氏は、2035年の埼玉県の医療を2010年並みに戻すために必要な、医師の労働時間あるいは医師数を試算。「若い医師が週168時間働けば、医師一人当たりの高齢者数、死亡数、後期高齢者死亡数のすべてが2010年並みになるが、1週間は168時間しかないので不可能。医師を増員せずに、2010年の医療には戻れない」と井元氏は指摘する。
 埼玉県に流入する医師が、現行の医学部定員から想定される数の1.2倍になれば、医師一人当たりが診る高齢者数が2010年並みになるが、高齢者数と死亡数数を2010年並みにするには1.7倍、高齢者数と死亡数、後期高齢者死亡数のいずれも2010年並みにするには、3.2倍にする必要があるという試算を提示した。
 もっとも、以上は、医師の勤務内容が現状と変化しないと仮定したシミュレーション。例えば、医師とコメディカルとの役割分担などが進めば、シミュレーション結果は変わり得る。
 「医学部新設」強調せず、鈴木・前文科副大臣
 「医師不足」のセッションには、前文部科学副大臣の鈴木寛・民主党参議院議員も出席。鈴木議員は、文科省の「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」(『座長が苦言、医学部新設の賛成派、反対派の双方に』を参照)を2010年12月に設置するなどして、医学部新設を支持してきたが、今年9月の野田政権誕生を機に、副大臣のポストから外れた。同検討会は8月10日以降、開催されていない。この日の講演で、地域医療を担う医師確保の必要性は強調したものの、医学部新設への強い意向はうかがえなかった。
 鈴木議員は、本検討会について、「震災対応もあり、当初の予定から進捗が遅れている。その最中に、副大臣を辞めることは残念」と述べた上で、「医師不足の問題については、医療界ではまだエビデンスに基づいた議論、熟議がなされていないが、井元氏から明確なエビデンスが出されている。我々がどんな価値、プライオリティーを持つかが重要であり、医療者、患者、納税者などの立場を超えて、一人の人間に立ち戻り、熟議を重ねていくことが重要」との基本認識を語った。
 直近の動きについては、医学部定員増を過去数年続けてきたため、「既存の枠組みで相当がんばってもらい、やるべきことはやってもらった。医師が1人前になるには8年かかる」とし、2010年度診療報酬改定で、医師の負担軽減の観点からチーム医療を評価したと説明。
 今後の医師養成のあり方について、地域医療、研究、国際医療を担う医師の必要性を指摘。「世界のイノベーションのサークルに入り続ける日本でありたい。さらに日本は、世界で最高水準の医療を低コストで提供している。日本がこれから拠って立つべきは医療。経済戦略としての医療を考えるだけでなく、例えば海外での医学教育に協力するなど、日本が貢献できる分野はある。しかし、地域医療を担う人材がいない中で、研究や国際医療を担う人材の議論はできない。地域医療を担う医師の確保に早く努めたい」(鈴木議員)。
 さらに、2035年を念頭に置き、「25年後には私は72歳になる」と語る鈴木議員は、今後の医療について、「四つの選択肢がある」とした。(1)日本人の医師が手厚く対応、(2)看護師ができる医療行為の範囲を増やし、日本人の看護師が中心に対応、(3)外国人医師、看護師が中心に対応、(4)医師には、死亡してから来てもらう――だ。鈴木議員は、「生きざまとしてどれを選ぶのか。すべての人が選択できるようにするのかどうか。メリット、デメリットを提示し、冷静に議論をしていくことが必要」と締めくくった。
 「医療の選択と集中で医療費の削減も可能」
  そのほか、「医師不足」のセッションには、医学部新設を目指している財団法人厚生会仙台厚生病院理事長の目黒泰一郎氏が出席(『医学部新設に向け報告書、仙台厚生病院・東北福祉大』を参照)、「医療における選択と集中が重要」と持論を展開。同病院は、心臓血管、呼吸器、消化器の3分野に特化し、383床の規模で、東北大学病院の目の前という立地でありながら、この3分野では東北で1位、2位の症例数を誇り、経営も改善したとした。例えば、仙台医療圏において、循環器疾患を特定の施設に集中させれば、より少ない医師数で対応可能だとし、医療費の低減にもつながり得るという試算も提示した。
 また、医療法人鉄薫会亀田総合病院経営企画室の小松俊平氏は、医療・介護の需要予測を提示、特に首都圏を中心とした都市部で医療・介護需要が急増すると指摘、現在の硬直化した医療計画をはじめ、諸制度を見直す必要性を強調。医療ジャーナリストの福原麻希氏は、医師不足対策として、(1)職種ごとのコア業務の絞り込み、(2)職種間の協働――の必要性を挙げた。

9.厚労省、看護師特定能力認証制度の骨子案を発表
保助看法の改正については懸念の声も
日経メディカル2011年11月8日

厚生労働省は11月7日、「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ(WG)」の17回目の会合を開催し、「看護師特定能力認証制度」の骨子案を発表した。同WGはこれまで、「特定看護師」(仮称)の創設に向けて議論を行ってきた。
 現在、保健師助産師看護師法(保助看法)で看護師の業務は「傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話または診療の補助」と定められているが、「診療の補助」の範囲が明確でなかった。今回の骨子案は、保助看法の改正により、特定の医行為(特定行為)が診療の補助に含まれることを明らかにし、実施方法を看護師の能力に応じて定めることで医療安全を確保し、適切かつ効率的に看護業務を行える枠組みを構築する狙いがある。骨子案の詳細は以下の通り。
【制度骨子】
1.特定行為
 医師または歯科医師の指示の下、臨床に係る実践的な理解力、思考力、判断力その他をもって行わなければ、衛生上危害を生じる恐れのある行為に関する規定を保健師助産師看護師法に位置づけることとする。
2.特定行為の実施
 看護師は以下のいずれかの場合に限り、特定行為を実施することができることとする。
(1)厚生労働大臣から能力の認証を受けた看護師が、能力認証の範囲に応じた特定行為について、医師の指示を受けて実施する場合
(2)看護師が、特定行為を実施しても衛生上危害を生じる恐れのない業務実施体制で、医師の具体的な指示を受けて実施する場合
3.厚生労働大臣の認証
(1)厚生労働大臣は、以下の要件を満たす看護師に対し、特定能力認証証を交付することとする。
1)看護師の免許を有すること
2)看護師の実務経験が5年以上であること
3)厚生労働大臣の指定を受けたカリキュラムを修了すること
4)厚生労働大臣の実施する試験に合格すること
(2)特定能力認証証の交付を受けた者は、特定能力認証証の交付を受けた後も、特定行為を含む業務を行うのに必要な知識および技能に関する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならないこととする。(以下略)
 WGでは医療現場で行われる行為を4つに分類(表1)。このうち、看護師が実施できる特定行為として、「医行為の侵襲性や難易度が高いもの」(B1)、「医行為を実施するにあたり、詳細な身体所見の把握、実施すべき医行為およびその適時性の判断などが必要であり、実施者に高度な判断能力が求められる(判断の難易度が高い)もの」(B2)を想定している。
表1 WGによる医療現場で行われる行為の分類
  行為の概要 実施の条件
A ・行為・判断の難易度が著しく高いもの(手術の執刀、全身麻酔の導入など)
・法律上「診療の補助」に含まれないことが明確なもの(処方など) ・医師のみが実施
B1 ・行為の侵襲性が相対的に高く、行為の難易度が高いもの(褥瘡の壊死組織のデブリードマンなど) ・認証を受けた看護師が実施
・医師の具体的指示の下に、安全管理体制を整えた上で看護師一般が実施
B2 ・実施者の裁量性が相対的に高く、高度な判断能力を要する(判断の難易度が高い)もの(脱水の判断と補正(点滴)など)
C ・行為の難易度、判断の難易度ともに看護師一般が実施可能なもの(尿道カテーテル挿入、発熱時の解熱剤投与など) ・看護師一般が実施
 特定行為の内容(診療の補助の範囲内)については、下位法令で規定する予定で、具体的な例については2011年度の「特定看護師(仮称)業務試行事業」の実施状況も含めて引き続き検討する。
能力認証を受けた看護師が、特定行為を実施する場合は、事前に作成したプロトコールを用いるなど、医師による包括的指示を受ければよいとしている。なお、包括的指示が成立する条件として、「チーム医療推進会議」の前身である「チーム医療の推進に関する検討会」が2010年3月に発表した報告書「チーム医療の推進について」では、以下の4つを挙げている。
(1)対応可能な患者の範囲が明確にされていること
(2)対応可能な病態の変化が明確にされていること
(3)指示を受ける看護師が理解し得る程度の指示内容(判断の規準、処置・検査・薬剤の使用内容など)が示されていること
(4)対応可能な範囲を逸脱した場合に、早急に医師に連絡を取り、その指示が受けられる体制が整えられていること
 このほか、能力認証を受ける上で必要なカリキュラムについては、看護の専門性を高めて医学的知識を身に付けるため、大学院修士課程相当(2年間)程度、および8カ月程度の2つの修業期間を想定。詳細については、2011年度の「特定看護師(仮称)養成調査試行事業」の実施状況を踏まえて引き続き検討する。
 WGの事務局である厚労省は当初、骨子案を社会保障・税一体改革の関連法案として、2012年の通常国会に提出することを想定していたが、これに対し、委員の星北斗氏(星総合病院理事長)が「拙速である」として反対を表明。「看護師の業務範囲の明確化に当たっては、まず最初に一般の看護師が行える行為を規定すべき。特定行為を先に規定してしまうと、看護師が現場で今実施している行為ができなくなるという不安を与えるのではないか」とした。これに対し、防衛医大外科学講座教授の前原正明氏が「人手不足の診療科は、医師を増やすだけでは追いつかない。この1~2年で改革しないと、医療崩壊がさらに加速する」と反論するなど、委員の間で合意は得られなかった。
 この日の議論を踏まえ、WG座長の有賀徹氏(昭和大医学部救急医学講座教授)は、11月18日に開催される「チーム医療推進会議」で骨子案について報告する。また、12月に開催予定の社会保障審議会医療部会においても、骨子案についての議論が行われる予定だ。

10.終末期医療に関する本人の意思確認カードを作りました
東日本大震災で感じた"ゆがみ"解消の一助のために
加納三代(慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、精神保健福祉士、社会福祉士)
日経メディカル2011年11月8日

脳梗塞などでいわゆる植物状態となり、物言わぬまま横たわる患者さんを前にして、「この方は果たして今の状態を本当に望んでいるのだろうか」と、臨床医なら誰しも一度は自問したことがあると思います。自らの意思を示せなくなった場合に備えて、あらかじめ医療に対するリクエストを明らかにしておいてほしい。私の夫は宮城県の内陸部のある病院に勤務しているのですが、東日本大震災を体験して改めてその重要性を痛感しました。
 災害時には、日頃表に出ない"ゆがみ"が顕在化します。避難所に身を寄せていた方が、寒さや慣れない環境のためにみるみる体調を崩し、夫の勤務先にも次々と搬送されてきましたが、その多くは、脳卒中の後遺症や認知症で寝たきりとなり、意思の疎通ができない高齢者でした。避難所の救護班からの紹介状には「津波で一家9人が流され行方不明」「本人はこの家で唯一の生存者」などと書かれてありました。胸が痛みましたが、何より困ったのは、家族がいなくなったために、患者さん自身の希望や意思の情報が入手できなくなっていたことです。
退院患者を引き受けない病院、家族
 次々に送られてくる患者さんを受け入れるためには、状態が落ち着いた患者さんから順々に退院させる必要があります。といっても、近くの病院や介護施設はどこも被災者で満員でしたし、たまたま見つかった施設からも「手がかかるから胃ろうにして」とか、「貴重な療養病床を提供するのだから、収益が上がるように気管切開や中心静脈栄養などで医療区分を高くしてくれたら受ける」など、厳しい条件を示されることもあったのです。また、夫の勤務先の事例ではありませんが、今回の震災後には下記のような話をよく耳にしました。
(1)家族と連絡が途絶えた
 介護施設が全壊して避難したものの食事を摂れなくなり、体調を崩して入院した、認知症のある方のケースです。意思の疎通ができないので、対処方針を相談するために家族をやっとのことで発見。しかし、「避難所で体調を崩した」「車が流されて交通手段がない」などと、面談の日をずるずると延期されてしまいました。電話で来院を催促したところ、「そもそも延命治療なんかこの人は望んでいない」と吐き捨てるように言われて音信不通に。果たして本人の意思がそのとおりなのか確認できないので治療の中止もできず、家族とコンタクトできないために病院からの行き先も決まらず、長期入院を余儀なくされてしまいました。
(2)医療費が無料なので病院から引き取らない
 病状が安定した慢性疾患の患者さんの話です。「入院して医療を受ける必要性がなくなったので退院です」と伝えたところ、本人も家族と暮らせることを楽しみにしていました。しかし、家族が「家が水をかぶったので行き場がない。介護施設だと病院並みのケアが受けられるか心配。このまま入院させてほしい」と譲りません。ところが看護師に話を聞いたところ、家族の本音は『月額20万円の障害年金が入ってくるし、身体障害者1級で医療費は無料なので、病院にこのまま入れておいた方が面倒がない』とのこと。自宅も床下浸水にとどまっており、家族は普通に生活しているそうでした。本人の希望などお構いなしです。退院調整も不発に終わったため、結局先が見えないまま病院にとどまることになり、本人は塞ぎこんでしま� �ました。
(3)世間体から家に引き取らない家族
 余命がわずかな患者さんについて、「最期は家で過ごしたいと言っていたから」と奥さんが自宅に連れて帰ろうとしました。ところが駆けつけた親族から「家で死なせたらご近所様に笑われる」「病院で逝かせてやるのが幸せだ」「家で亡くなって検視にでもなったら警察が来る。パトカーが停まってるなんて格好がつかない」などと押し切られて断念せざるを得ませんでした。奥さんが「嫁の話なんかだれも聞き入れてくれない。本人が書類で希望を残してくれていたら違ったのかな」とぽつりとこぼしたそうです。
終末期の意思表示の位置付けのあいまいさ
 今回の震災を通じて私たちは、「安定した日常も突如として終わる」ことを身を持って知りました。また、突然襲ってくる自然災害によって医療機関や家族から見放されてしまう可能性があることも悟りました。だからこそ、「治療によって回復が見込めなくなったとき、自分はどのように医療を行ってほしいのか」という意思を、形として残しておく必要性を痛感したのです。

ドナーカードを模した「終末期医療意思表示カード」(表面)。
 理想主義だと笑われるかもしれませんが、医療は患者さんの希望を叶えるためのものだと私たち夫婦は考えています。自分で意思表示ができなくなった時に、医療機関や介護施設、家族や他人の都合で生かされることを望まず、「自分の最期ぐらいは自分の意思で決めたい」という患者さんの想いがあれば、尊重されるべきでしょう。


食欲不振ENロスhombres

裏面。療養場所のほか、延命に関連する9点について、希望を記載できるようにした。サイズは一般的な名刺と同じ。
 私たち夫婦のそんな思いを形にしたのが、臓器提供の意思を表すドナーカードを模した「終末期医療意思表示カード」です。もちろん、終末期医療について希望を伝えるための書類は、ネットを探せばいくらでも見つかります。ただ、無料で簡単に書け、携帯できるタイプは発見できませんでした。今回作ったカードならば、サインをして丸を付けるだけで最低限の意思が表示できますし、気が変わったらいつでも書き直せます。ただ、高齢者にとっては字が小さいかもしれませんし、紙幅の関係で個々の医療行為についての説明もありません。内容についても十分練られていない面もありますが、もしもの時のことを家族でよく話し合っていただくための素材にはなると思います。
もちろん、現時点ではいわゆる延命治療の開始や中止について、法的に「絶対に大丈夫」という基準がありません。今回のカードを含め、リビングウィルやアドバンス・ディレクティブが文書で残されていても、治療を中止した場合に100%訴追されないとは限らないことが現場を苦しめています。安楽死・尊厳死の裁判を受けて、厚生労働省が2007年5月にまとめた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」でも具体的な内容が定まっていないことも一因でしょう。ただ、本人の意思を文書で示すことが議論や対応を決めるうえでの前提となることは間違いありません。
終末期医療をカネと絡めると失敗する
 とはいえ、2008年の新設直後に運用が凍結された「後期高齢者終末期相談支援料」のような形ではうまくいかないと思います。同支援料は後期高齢者に対して、患者やその家族と医療者が終末期における診療方針を話し合い、その内容を文書にまとめた場合、200点を算定できるというもの。
 この報酬で示された「高齢者が人生の最期をどのようにしたいかという希望について、医療チームで相談に乗って支えていこう」というコンセプト自体は悪くありません。ただ、後期高齢者医療制度が立ち上がるタイミングで診療報酬に盛り込んだことで、医療費を節減するためのツールとして受け取られ、高齢者に「必要な医療を受けられなくなる」という恐怖心を抱かせてしまいました。厚労省を叩く格好の道具となったため、失敗したのではないでしょうか。
 また、この支援料が話題になったことで、終末期の相談に真摯に取り組んでいる医療機関が、「お年寄りを早く死なせることで、国から金をもらう最悪の病院」といったネガティブなイメージを持たれ、当時の先生方はたいへん苦労したと聞いています。お金がからむと物事が曇って見えてきます。診療報酬と切り離した形で、「もしもの時にどのような医療を受けたいか」について、患者さんが自らよく考え、家族とも相談しておく制度、あるいは文化を作ることが必須でしょう。
 当初、私たちが考えたのは、「要介護認定の申請書類に『終末期医療についての希望』を尋ねる欄を設ける」というものでした。要介護認定の申請は、高齢者自身も家族も心身の衰えを認識したからこそ行われます。そうした機会をとらえて、時間的な余裕があるうちに家族で人生のしめくくりについてよく考えてもらえないだろうか、というアイデアです。公的な書類なら、災害が起こっても保管される可能性が高いし、万一の際にも活用しやすいはずです。しかし、話を持ちかけた役所から待ったがかかり、「厚労省が決めた書式をいじるとはいかがなものか」「個人情報の目的外使用はできない」といった事務的な問題から、「『終末期相談支援料』のように正しく理解されず、混乱を招くおそれがある」といった批判が寄せら� �ました。担当者も終末期の問題は避けて通りたいようで、残念ながらこちらは頓挫しました。
 そこで役所に頼らずにできる、やり方を考えることにしました。カード方式を思いついたのは、外来の待合を見ていた時です。当地では高齢者は待合室で近くの方と雑談して過ごします。地震の恐怖や津波の被害などの重たい話題も、お年寄り同士で話し合うことでピアカウンセリングのような効果があったようです。高齢者同士であれば終末期医療のような重たい話も気軽に話せるかもしれませんし、お互いに見せ合うようなカードなどがあれば、自分なりの意思決定に役立つはずです。情報量でいえばお薬手帳のスタイルが勝りますが、持ち歩いてもらうことを優先し、財布に放り込んでおけるサイズにしました。
 意思表示をするのは高齢者が多いだろうと考え、なるべく文字を大きくしてシンプルにしようと考えました。ドナーカードのような3択を模索しましたが、さすがに複雑な問題ですので、療養の場所を3択で選び、延命のための医療行為を並べて「はい」「いいえ」で選ぶ形式にしました。ある程度たたき台ができたところで、twitterなどで意見を募り、医療関係者ではない方々の意見も取り入れてカードの内容を固めました。
 カードの内容は夫の同僚の先生方や私の同級生の臨床医などからも意見をいただいています。意見をいただく中、「患者さんの希望にそった形の終末期医療にしていきたい」と考えている医師が多いことと改めて感じたことも付記しておきたいと思います。
 さて、カードの完成後、ある自治体の広報誌にカードを掲載してもらえないかと打診したところ、興味は持ってもらえたのですが、「うちでは時期尚早」と言われ、話を進めることはできませんでした。「ジェネリック医薬品に替えてください」という意思を表示するカードは広報誌に掲載されているのですが、自らの死生観を示すカードとなると、やはりデリケートな判断が求められるようです。それでも、今回試作したカードを通じて、広く一般の方々が、「終末期医療は決して高齢者や難病を抱えた患者さんだけの問題ではない」と認識し、自らの終末期にどのような対応を求めるかについて考える文化が広がればいいな、と思っています。
 もしも患者さんが倒れて救急車で運ばれ、搬送先の病院で所持品を調べたところ今回のカードが出てきたとしても、医師が家族の反対を押し切ってこのカードだけを根拠に延命治療を中止するといった強引なことは、現行法下ではできないでしょう。もちろん私たちも、そのような使われ方は望んでいません。医療チームと家族とがよく話し合い、患者本人にとってより良い結論を導くための材料としてこのカードが活用されることを願っています。
 カードは現在、実費でお配りしています。また、カードとは別に、延命治療としての中心静脈栄養や胃ろうなどについて簡単にまとめたリーフレットやDVDも、併せて活用できるよう作成しているところです。興味のある方は、pupura7/p>

11.癌化学療法時の感染症、CFPM非感受性菌に注意
東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科教授 相羽 惠介氏
日経メディカル2011年11月8日

癌化学療法により好中球が減少すると、感染症のリスクが高まる。発熱性好中球減少症が見られた際には、経験的抗菌薬療法を開始しつつ血液培養検査を行い、より早期に耐性菌を把握し、治療方針を確立する必要がある。
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 「感染頻度は少ないが、種々の抗菌薬に高度耐性で死亡率が高いことから、初期治療の抗菌薬が効かない場合にはStenotrophomonas maltophilia感染も疑ってみてほしい」。東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科教授の相羽惠介氏は話す。
 癌化学療法治療時の感染症は、以前から、強力な化学療法が行われる白血病などの造血器腫瘍では重要な問題だったが、最近では固形腫瘍であっても、新規抗癌剤や抗体医薬の使用により好中球減少が発現しやすく、感染症のリスクが高まっている。発熱性好中球減少症の発症率が20%を超える化学療法も出てきている。
 このような状況を受けて2011年2月、米国感染症学会(IDSA)は、発熱性好中球減少症の診療ガイドラインの改訂版を公表した(図1)。改訂版では好中球減少の定義を「好中球数500/μL未満、あるいはその後48時間以内に好中球数500/μL未満への減少が予測される状態」とし、改訂前は具体的に記載していなかった「48時間以内」が明記された。急速に状態が悪化するかどうかの判断が求められるようになったわけだ。
図1●米国感染症学会が2011年に改訂した発熱性好中球減少症の診療ガイドライン

 日本でも、発熱性好中球減少症の診療ガイドラインの改訂に向けて作業が進んでいる。しかし、「頻度の低い感染症はガイドラインだけではカバーできない。治療関連感染症は多彩化・重篤化しており、施設内での感染症起炎菌やその抗菌薬感受性、耐性菌の動向を常に把握する必要がある」(相羽氏)。
S. maltophiliaにはST合剤
 そこで相羽氏は、2005年1月~2010年9月に同科において血液培養検査を行った7050検体について分析した。培養陽性だった824検体(11.7%)から、同一エピソードと思われる検体を除くと515検体で、うち24検体から真菌が検出された。残りの491検体のうち、328検体(66.8%)からグラム陽性菌が検出され、その内訳はStaphylococcus epidermidisを含めたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が46.0 %を占め、Enterococcus faecium 9.1%、Staphylococcus aureus6.4%、Enterococcus faecalis 5.2%、MRSAとStaphylococcus mitisの4.0%と続いた。グラム陰性菌は163検体(33.2%)で、Pseudomonas aeruginosa22.1%、Escherichia coli 13.5%、Klebsiella pneumoniae 12.3%、S.maltophilia 11.0%などだった。
グラム陰性菌が分離された検体のうち79検体について、ガイドラインで初期治療に推奨されているメロペネム(MEPM)、セフェピム(CFPM)に対する感受性試験を施行した結果、25検体(31.6%)がMEPM非感受性、21検体(26.6%)がCFPM非感受性であり、うち18検体がS. maltophiliaだった。ここからコンタミネーションと思われる2検体を除いた16検体について、各種抗菌薬への感受性を調べた。
 すると、S. maltophilia は、CFPM、カルバペネム系薬のイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)やMEPMには非感受性だが、スルファメトキサゾール/トリメトプリム(ST)とミノサイクリン(MINO)には100%の感受性を示した(図2)。「ガイドラインで推奨されている抗菌薬がまったく効かない場合には、S. maltophilia感染も疑ってみてほしい。S. maltophiliaが検出されたらST合剤などの適切な抗菌薬治療が求められる(図3)」と相羽氏は話している。
図2●S. maltophiliaの抗菌薬感受性(相羽氏による)

図3●S. maltophilia感染例の典型的な経過(相羽氏による)

12.トラネキサム酸投与で前立腺切除術中の輸血リスクが4割減
BMJ誌から
日経メディカル2011年11月8日

出血外傷患者の出血死を減らすなどの利益が報告されているトラネキサム酸が、前立腺全摘出術を受ける患者への低用量投与においても、輸血リスクを減らすことが分かった。イタリアVita-Salute San Raffaele大学のAntonella Crescenti氏らが、BMJ誌2011年10月29日号に報告した。
 根治的恥骨後式前立腺切除術は、局所に留まる前立腺癌に対する外科的治療として広く行われている。この術式の重要な合併症の1つが術中と術後の出血で、輸血が必要になることがしばしばある。
 著者らは、恥骨後式前立腺切除術を受ける患者を対象に、術中の低用量トラネキサム酸投与が周術期の輸血の必要性を減らせるかどうかを調べ、長期的な安全性も評価する二重盲検の無作為化試験を実施した。イタリアの大学病院1カ所で、恥骨後式前立腺切除術を受ける18歳超の患者200人(平均年齢64歳)を登録。心房細動患者、薬剤溶出ステントを使用している冠動脈疾患患者、重症の慢性腎不全患者、先天性または後天性の栓友病患者、トラネキサム酸アレルギーがある(または疑い)患者は除外した。
 患者をトラネキサム酸または生理食塩水に1対1で割り付けた。介入群には、手術開始20分前に、生理食塩水100mLで希釈した500mg/5mLのトラネキサム酸をゆっくりと投与し、術中は250mg/時で継続静注した。
 主要アウトカム評価指標は、周術期(手術開始から退院まで)に輸血を受けた患者の割合、2次評価指標は術中の出血量とした。6カ月の追跡を行い、死亡率と血栓塞栓イベントの発生率を指標に長期的な安全性を評価した。
 全員が追跡を完了した。
 周術期に輸血を受けた患者は介入群の34人(34%)と対照群の55人(55%)で、差は21パーセンテージポイント(7-34)だった。対照群と比べた介入群の相対リスクは0.62(95%信頼区間0.45-0.85、P=0.004)、治療必要数(NNT)は5(3-14)になった。
 術中と術後に分けて検討すると、トラネキサム酸の輸血リスク低減効果は術中に認められた。術中に輸血が必要になった患者は、介入群22人(22%)、対照群47人(47%)で、相対リスクは0.47(0.30-0.71、P≦0.001)。その後の輸血リスクは対照群との間に有意差を示さなかった。
 術中の出血量は、介入群が1103mL(SDは500.8)、対照群が1335mL(SDは686.5)で、差は232mL(30-371mL、P=0.01)だった。
 6カ月の追跡期間中に患者死亡は見られなかった。血栓塞栓イベントは介入群の2人と対照群の5人に発生、相対リスクは0.4(0.09-1.74、P=0.4)で差は有意ではなかった。
 恥骨後式前立腺切除術中の低用量トラネキサム酸静注は、輸血を受ける患者の割合を有意に減らした。著者らは、周術期の出血リスクが高い他の泌尿器科手術においても、トラネキサム酸は有効ではないかと考えている。
 原題は「Intraoperative use of tranexamic acid to reduce transfusion rate in patients undergoing radical retropubic prostatectomy: double blind, randomised, placebo controlled trial」

13.バレット食道が食道腺癌になるリスクは従来推定より低い
罹患率は年間0.12%、ただし一般集団と比べたリスクは11.3倍(NEJM誌から)
日経メディカル2011年11月8日

食道腺癌の前駆病変と考えられているバレット食道の患者を5年(中央値)追跡した研究で、実際に食道腺癌に罹患する患者は年間0.12%にとどまることが明らかになった。ただし、一般集団と比較したリスクは11.3倍と高かった。デンマークAarhus大学病院のFrederik Hvid-Jensen氏らが、NEJM誌2011年10月13日号に報告した。
 バレット食道は胃食道逆流症の合併症で、軽度異形成と高度異形成を経て食道腺癌に転じるとの考えから、内視鏡による経過観察が行われている。しかし、新規食道腺癌患者の約95%はバレット食道の診断歴を持たない。また、内視鏡を使った経過観察による生存利益は示されていない。
 これまで、バレット食道患者が食道腺癌または高度異形成となるリスクを調べた研究は複数行われているが、いずれも質が十分に高いとはいえなかった。そこで著者らは、デンマーク国民を対象とした大規模コホート研究を行うことにした。
 同国内で行われた生検の結果をすべて登録しているデンマーク病理学登録とデンマーク癌登録を利用して、人口540万人のデンマークで、1992年以降にバレット食道と診断されたすべての患者を抽出。食道腺癌または高度異形成の診断、他国への移住、死亡、もしくは09年まで追跡し、食道腺癌と高度異形成の罹患率を1000人-年当たりで求めた。
 調査対象となった期間のデンマーク全体の癌罹患率を用いて、相対リスクの指標となる標準化罹患比を求めた。標準化罹患比とは、対象となるコホートで実際に発生したイベントの件数を、コホートに予測されたイベントの件数(=コホートと年齢、性別、評価年度が同じ一般集団のイベント発生件数)で割ったものだ。
 生検を受け、バレット食道と診断された患者は1万1028人。年齢の中央値は62.7歳、男性が7366人、追跡期間は中央値5.2年(6万7105人-年)だった。
 バレット食道と診断された患者のうち、食道腺癌に罹患したのは197人。この期間の一般集団の食道腺癌診断は2602人だった。したがって、そのうち7.6%がバレット食道診断歴のある患者だったことになる。バレット食道患者の食道腺癌罹患率は、1000人-年当たり2.9(2.6-3.4)、で、標準化罹患比は29.0(95%信頼区間25.1-33.3)になった。
 バレット食道が発見された内視鏡検査から1年以内に食道腺癌と診断された患者は131人。それ以降に発見された食道腺癌は66人で、(バレット食道患者で)食道腺癌に罹患した患者の3分の2は、バレット食道診断から1年以内に癌と診断されていた。これは、当初の内視鏡検査時に腺癌の存在が見逃されていた可能性を示唆する。
 そこで、バレット食道診断から1年以内の食道腺癌診断例を除外して食道腺癌罹患率を求めたところ、1000人-年当たり1.2(0.9-1.5)で、1年当たりのリスクは0.12%となった。これはバレット食道患者860人を1年追跡すると、食道腺癌が1例見付かることを意味する。標準化罹患比は11.3(88-14.4)で、一般集団と比べれば食道腺癌リスクは11.3倍と推定された。
バレット食道診断後に高度異形成が見付かった患者は178人いた。このうち、追跡開始から1年以内に見付かった高度異形成は72人 (バレット食道患者全体の0.7%)、それ以降に見付かった高度異形成は106人(1.1%)だった。バレット食道診断から2年目以降の高度異形成罹患率は、1000人-年当たり1.9(1.6-2.3)、同じ期間の食道腺癌または高度異形成の罹患率は1000人-年当たり2.6(2.2-3.1)で、食道腺癌または高度異形成の標準化罹患比は21.1(17.8-24.7)になった。
 バレット食道の診断を受けた内視鏡検査で、軽度異形成が同時に検出された患者は621人(5.6%)、検出されなかったのは1万407人だった。追跡2年目以降に食道腺癌と診断された66人の患者のうち、当初は軽度異形成ではなかった患者は52人(1万407人中の0.5%)、軽度異形成が見つかっていた患者は14人(621人中の2.3%)だった。食道腺癌の罹患率は、当初軽度異形成なし群が1000人-年当たり1.0(0.7-1.3)、当初軽度異形成あり群が5.1(3.0-8.6)となり、軽度異形成なし群と比較した軽度異形成あり群の相対リスクは4.8(2.6-8.8)になった。
 高度異形成のリスクについても同様の結果が得られた。当初軽度異形成が認められた患者の罹患率は1000人-年当たり8.6(5.6-13.0)、当初軽度異形成なし群は1.6(1.3-1.9)で、相対リスクは4.7(3.0-7.6)。同様に、当初軽度異形成あり群の食道腺癌または高度異形成の相対リスクは5.1(3.4-7.6)になった。
 なお、追跡期間中のいずれかの時期に軽度異形成が認められた患者についても同様に分析したところ、1000人年-当たりの食道腺癌罹患率は5.5(3.7-8.3)、高度異形成罹患率は11.2(8.3-15.1)となり、当初から軽度異形成があった患者と同様かそれ以上にリスクが高いことが示された。
 バレット食道は食道腺癌の強力な危険因子ではあるが、診断から2年目以降の絶対リスクは0.12%で、これまで考えられていた0.5%より低かった。0.5%を根拠として、現在デンマークでは内視鏡経過観察が行われている。今回得られたデータは、異形成が見られないバレット食道患者を経過観察の対象とすることに強い疑問を投げかけた、と著者らは述べている。
 原題は「Incidence of Adenocarcinoma among Patients with Barrett's Esophagus」

14.現在・元ヘビースモーカーへの低線量CT肺がんスクリーニングで、COPD検出可能
CareNet2011年11月8日


純粋な重量損失センターインディアナ州

現在および以前にヘビースモーカーであった人に対する、低線量CT肺がんスクリーニングは、感度63%、特異度は88%と、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を検出可能であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのOnno M. Mets氏らが、1,140人を対象に行った前向き横断試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月26日号で発表した。
50~75歳、1日16本、25年間喫煙といったヘビースモーカーを対象
研究グループは、2007年7月~2008年9月にかけて、50~75歳の現在または過去の喫煙者男性、1,140人について試験を行った。被験者は、1日16本以上の喫煙を25年以上、または11本以上を30年以上などのヘビースモーカーだった。
研究グループは被験者に対し、同一日に行う吸・呼気CT検査で、気管支拡張薬服用前の肺機能検査を行った。
肺気腫の定義は、FEV1/FVCが70%未満だった。
感度63%、特異度88%、陽性適中率76%、陰性適中率79%
その結果、肺気腫が認められたのは、全体の38%にあたる437人だった。
CTによる肺気腫や空気とらえ込み現象の検出、BMI、喫煙量(パック・年)、喫煙状況などで補正を行った結果、CT検査によるCOPD検出モデルのROC曲線下面積は0.83(95%信頼区間:0.81~0.86)だった。
同モデルによって、COPD陽性と判定されたのは274人で、うち85人が偽陽性だった。COPDの同モデルによる検出感度は63%(同:58~67)、特異度は88%(同:85~90)、陽性適中率は76%(同:72~81)、陰性適中率は79%(同:76~82%)だった。
被験者で症状のある人については、ROC曲線下面積は0.87(同:0.86~0.88)、症状のない人については0.78(同:0.76~0.80)だった。

15.PCI後の早期ステント血栓症リスク、遺伝的要因と臨床要因で予測可能
CareNet2011年11月8日

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の早期ステント血栓症リスクは、遺伝的要因と臨床要因によって予測可能であることが示された。同発症に関連している遺伝子として3つが関連していること、また2つのクロピドグレル関連因子(高用量服用、PPI服用)が明らかになった。フランス・INSERM循環器研究所のGuillaume Cayla氏らが、PCI後に早期ステント血栓症を発症した123人とその症例対照群について調べたケースコントロール試験により明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月26日号で発表した。
15種遺伝子の23種遺伝的変異種について調査
研究グループは、2007年1月~2010年5月にかけて、フランス10ヵ所の医療センターでPCIを行い早期ステント血栓症を発症しDNAサンプルが得られた123人と、年齢と性別をマッチングし同発症が認められなかったコントロール群246人について、ケースコントロール試験を行った。
主要アウトカムは、15種遺伝子の23種の遺伝的変異種の有無と、PCI後の早期ステント血栓症発症との関連だった。
遺伝的要因3つが早期ステント血栓症発症と関連
その結果、PCI後の早期ステント血栓症発症リスクと関連が認められた遺伝子は、CYP2C19代謝状態(補正後オッズ比:1.99、95%信頼区間:1.47~2.69)、ABCB1 3435 TT遺伝子型(同:2.16、同:1.21~3.88)、ITGB3 PLA2保有(同:0.52、同:0.28~0.95)の3つだった。
遺伝子以外の独立リスク因子は、PCIの切迫性(同:3.05、同:1.54~6.07)、複雑病変(ACC/AHA基準でタイプC、同:2.33、同:1.40~3.89)、左室機能40%未満(同:2.25、同:1.09~4.70)、糖尿病(同:1.82、同:1.02~3.24)、プロトンポンプ阻害薬の服用(同:2.19、同:1.29~3.75)、クロピドグレル高用量服用(同:0.73、同:0.57~0.93)が認められた。
遺伝子予測モデルと臨床予測モデルそれぞれのAUC(曲線下面積)は、0.73(同:0.67~0.78)と0.68(0.62~0.74)で、予測能は同等だった(P=0.34)。
遺伝子・臨床複合予測モデルのAUCは0.78(同:0.73~0.83)で、臨床要因のみの予測モデルの同0.73(同:0.67~0.78)に比べ大きく、予測能は有意に高いことが示された(p=0.004)。
著者は、「今後前向き試験にて、これらリスク因子の予測精度を検証する必要がある」とまとめている。

16.高齢者は痩せると脳卒中になりやすい【医師レポート】
肥満と異なる、「脆弱な高齢者」リスク
玉置 昇(たまきクリニック)第34回日本高血圧学会学術総会

2011年10月21日に行われた第34回日本高血圧学会総会で、「高齢高血圧患者における血圧高値の脳に対するリスクは肥満よりも痩せにおいて顕著である―frail elderly対策の戦略としての可能性―」と題し講演したので、一部の内容を報告する。
 一般的には健康に好ましいともされる「痩せ」が心血管疾患のリスクとして浮上しており、肥満とは異なる背景があり得る。514人の患者を検証した結果、痩せた群で脳卒中が多いと分かった。今後、脆弱な高齢者への医療対応が重要になりそうだ。
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 かねて肥満と高血圧の関連についてはよく知られている。高血圧の心血管系に与えるリスクは肥満で増強されるという報告がある。逆に痩せで増強するとの報告もあった。痩せも悪いのか否かを巡っては、一定の見解は得られていない。
 脳への影響を対象に、痩せのリスクの課題を検討した研究は今まで報告されていない。高齢者においては今後早急に検討すべき課題の1つであるのは間違いない。なぜならば、もし高齢者で痩せている場合に、血圧高値の脳卒中、無症候性脳梗塞(silent cerebral infarction:SCI)などの脳に対するリスクを高めるならば、看過できない。問題視されつつある「Frail Eldery(脆弱な高齢者)」に関連する可能性もある。
痩せは交感神経が活性化
 私たちは痩せ群と肥満群を比較して、高血圧と心血管疾患イベントとの関係を検証した。対象としたのは、50歳以上の本態性高血圧患者514人で、24時間血圧測定、採血、脳MRIを施行した。平均年齢72.3歳で、男性は37%となっている。心血管系疾患既往者、癌患者は除外した。
 痩せはBMI(kg/m2)の最下位4分位と定義した。該当する患者群は129人で、平均BMIが19.8。BMIが25以上を肥満と定義したところ、肥満群は192人で、平均BMIは27.7となった。また、痩せ群では高齢の患者が目立った。痩せ群は73.3歳に対して、肥満群は73.1歳で、肥満群は70.7歳(P<0.01)。痩せ群では喫煙者が多い傾向があり、痩せ群の中で喫煙者は29%、正常体重群は18%、肥満群は21%(P=0.053)となっていた。24時間血圧レベルは3群間で有意な差はなかった。
 痩せでは、交感神経の活性化が起きている可能性が確認された。痩せ群の血中ノルアドレナリン濃度は404.6pg/mLであり、正常体重群(336.2pg/mL)や肥満群(329.2pg/mL)よりもが高かったことが確認された(P<0.01)。また、血中レニン活性は痩せでは0.02ng/mL/時で、正常体重群は0.19ng/mL/時、肥満群は0.19ng/ml/時であり、有意に低かった(P=0.01)。
高血圧治療、痩せこそ注意
 SCIの頻度を調べたところ、多発性SCI(3個以上のSCI)が痩せ群で多い傾向が見られた。SCIの頻度そのものは3群間で差はなかったのもの、多発性SCIについては痩せ群の26%と4人に1人の割合で見られ、正常体重群(18%)、肥満群(17%)と比べると大きな差があった(P=0.098)。
 さらに、BMIで分けた3群を、24時間血圧レベルの高低(130/80mmHg未満と130/80mmHg以上)でさらに6群に分け、痩せの場合に、血圧高値がSCIの発生にとってどれほどリスクになるか検証したところ、痩せと高血圧の並存がSCIの発生を高める可能性が示された。
 また、年齢、性、喫煙の有無、高脂血症の有無で補正して、ロジスティック解析したところ、痩せでかつ24時間血圧高値の群は、正常体重かつ24時間血圧正常群と比較すると、SCIのオッズ比が2.0倍となっていた(95%信頼区間:1.0‐4.1、P<0.01)。
 SCIの数で比較すると、痩せでしかも24時間血圧高値の群が最も多かった。多発性SCIsのオッズ比は、正常体重で24時間血圧正常群に比べて4.8倍に上った(95%信頼区間:1.8‐12.9、P<0.05)。
 血中のノルアドレナリン濃度で補正したところ、痩せでかつ24時間血圧高値の群では、多発性SCIのオッズ比は3.49倍と低下するも有意に高かった(95%信頼区間:1.26‐9.69、P<0.05)。さらに、多発性SCIの規定因子をロジスティック解析で検証すると、痩せ単独では独立のリスクとならなかった。独立したリスクだったのは、24時間血圧高値と血中ノルアドレナリン濃度高値だった(いずれもP<0.001)。
 検証した結果として、高齢高血圧患者では、血圧高値の脳に対するリスクは肥満よりも痩せで顕著であった。痩せそのものは独立したリスクではないが、痩せの患者で頻繁に見られる交感神経の活性化が考えられた。「脆弱な高齢者」対策の一戦略として、血圧管理により気を払うのが重要であると考えられた。

17.胸部X線スクリーニング検査、肺癌死を減らす効果見られず、PLCO試験

文献:Oken MM et al.Screening by Chest Radiograph and Lung Cancer Mortality: The Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian (PLCO) Randomized Trial.JAMA. Published online October 26, 2011.
 15万4901人(55-74歳)を対象に、胸部X線スクリーニング検査の肺癌死亡率への影響を無作為化比較試験で評価。累積罹患率は年1回の胸部X線検査群20.1/1万人年、通常ケア群19.2/1万人年だった。全肺癌死はX線群1213件、通常ケア群1230件で、胸部X線スクリーニング検査の肺癌死を減らす効果は見られなかった。

18.体重増加を促すホルモン濃度、減量成功後も高いまま

文献:Sumithran P et al.Long-Term Persistence of Hormonal Adaptations to Weight Loss.N Engl J Med 2011; 365:1597-1604.
 食事制限による減量プログラムの参加者50人を対象に、体重制御にかかわる血中末梢ホルモン濃度、空腹感を調査。減量によりレプチン、ペプチドYYなどの血中濃度が有意に低下、胃抑制ポリペプチド、膵ポリペプチドが有意に増加した。減量1年後も体重再増加を促す末梢ホルモンの濃度、空腹感は、減量プログラム開始時には戻らなかった。

19.乾癬へのbriakinumab、メトトレキサートより高い有効性

文献:Reich K et al.A 52-Week Trial Comparing Briakinumab with Methotrexate in Patients with Psoriasis.N Engl J Med 2011; 365:1586-1596.
 中-重度の乾癬患者317人を対象に、インターロイキン12/23 p40モノクローナル抗体briakinumabの有効性を無作為化試験で検討。メトトレキサートと比べたbriakinumabの52週時のPASIスコア(乾癬の面積と重症度指数)75%改善率は23.9%対66.2%で、briakinumabの有効性が高かった。

20.Heart Stent Patients Get Personalized Care: Guidelines
Bloomberg2011年11月8日

Patients with clogged arteries should be given more information on treatment options before they have surgery or get a procedure to clear the vessels, to cut down on unnecessary care, three U.S. heart associations said today.
Those with the most-complex cases should be evaluated by surgeons who do bypass operations and cardiologists who implant stents to prop open arteries in a team approach to determine which is best, the revised guidelines say. Less-serious patients, whose clogged arteries are now cleared during the same procedure used to find the problem, should instead meet with the physician after the diagnosis to review how the work should be done.
The guidelines are designed to rein in cardiologists who typically are first to evaluate patients and may treat them without reviewing options such as surgery and drug therapy, the heart groups said. Use of angioplasty and stents to clear and hold open arteries has surged, in many cases displacing bypass surgery that uses blood vessels to reroute blood flow around a blockage.
"These guidelines for the first time advocate a heart team approach, which may change practice," said Jim Blankenship, vice chair of the writing committee on the guidelines and an interventional cardiologist in Pennsylvania. "When you have the advice not only of a cardiology expert but a surgical expert, patients will get a balanced and dispassionate analysis."
The new guidance was developed by the American College of Cardiology, the American Heart Association and the Society for Cardiovascular Angiography and Interventions. It also includes a recommendation of an 81-milligram baby dose of aspirin daily for heart patients, eliminating the treatment range that led some to take too much and develop bleeding.
Stent Advice
Only patients who are able to take aspirin and another drug for a year to prevent blood clots from forming should be given stents, sold by Boston Scientific Corp. (BSX), Abbott Laboratories (ABT) and Medtronic Inc. (MDT) The authors also said AstraZeneca Plc (AZN)'s newest drug, Brilinta, is equal to Plavix from Sanofi and Bristol-Myers Squibb Co. (BMY) and Efient from Eli Lilly & Co. (LLY) for preventing the deadly clots.
Genetic tests to identify patients who are resistant to treatment with Plavix may be useful for those at the highest risk of developing blood clots. While the tests aren't recommended for everyone, patients who are found to have a muted response to Plavix may consider Efient or Brilinta, the guidelines say.
The heart groups updated the recommendations for bypass surgery, which underwent their last revision in 2004, and for angioplasty and stenting, which were previously done in 2005, with updates every other year.

21.Light 'promising' in cancer fight
BBC News2011年11月7日

Light is a "promising" tool in the fight against cancer, say researchers in the US.
A study, published in Nature Medicine, showed how a drug could be created which sticks to tumours, but is then only activated when hit by specific waves of light.
It means a treatment can be highly targeted and not damage the surrounding tissue.
A cancer charity said the treatment showed early promise.
Currently, treatments for cancer can be separated into three categories: blasting it with radiation, surgically removing a tumour or using drugs to kill the cancerous cells. All have side effects and scientists are trying to come up with more precise therapies.
In this study, researchers at the National Cancer Institute, Maryland, used an antibody which targets proteins on the surface of cancerous cells.
They then attached a chemical, IR700, to the antibody. IR700 is activated when it is hit by near infrared light. This wavelength of light can penetrate several centimetres into the skin.
To test the antibody-chemical combination, researchers implanted tumours, squamous cell carcinoma, into the backs of mice. They were given the drug and exposed to near infrared light.
Shrinking tumour
The study said: "Tumour volume was significantly reduced... compared to untreated control mice and survival was significantly prolonged.
"This selective killing minimises damage to normal cells."
The authors said the combination was "a promising therapeutic and diagnostic agent for the treatment of cancer".
"Although we observed no toxicity in our experiments, clinical translation of this method will require formal toxicity studies," they added.
Dr Laura McCallum, Cancer Research UK's science communications officer, said the research was promising.
"Using antibodies or photodynamic therapy to specifically target cancer cells have both been successful for treating some cancers, so combining the two together is certainly an exciting plan.
"But it's important to remember that this work was done in mice, so it's much too early to tell if it will work in people with cancer.
"This potential treatment has promise as scientists - including our own - are also looking at using antibodies to deliver other knockout punches, such as radiation, directly to cancer cells."

22.Doctor trials laser treatment to change eye colour
BBC News2011年11月6日

A US doctor is trying to pioneer a laser treatment that changes patients' eye colour.
Dr Gregg Homer claims 20 seconds of laser light can remove pigment in brown eyes so they gradually turn blue.
He is now seeking up to $750,000 (£468,000) of investment to continue clinical trials.
However, other eye experts urge caution because destroying eye pigment can cause sight problems if too much light is allowed to enter the pupil.
Stroma Medical, the company set up to commercialise the process, estimates it will take at least 18 months to finish the safety tests.
'Irreversible'
The process involves a computerised scanning system that takes a picture of the iris and works out which areas to treat.
The laser is then fired, using a proprietary pattern, hitting one spot of the iris at a time.
When it has hit every spot it then starts again, repeating the process several times.
However the treatment only takes 20 seconds.
"The laser agitates the pigment on the surface of the iris," Dr Homer - the firm's chairman and chief scientific officer - told the BBC.
"We use two frequencies that are absorbed by dark pigment, and it is fully absorbed so there is no danger of damage to the rest of the eye.
"It heats it up and changes the structure of the pigment cells. The body recognises they are damaged tissue and sends out a protein. This recruits another feature that is like little pac-men that digest the tissue at a molecular level."
After the first week of treatment, the eye colour turns darker as the tissue changes its characteristics.
Then the digestion process starts, and after a further one to three weeks the blueness appears.
Since the pigment - called melanin - does not regenerate the treatment is irreversible.
Lasers are already used to remove the substance in skin to help treat brown spots and freckles.
Safety concerns
Other eye experts have expressed reservations.
"The pigment is there for a reason. If the pigment is lost you can get problems such as glare or double vision," said Larry Benjamin, a consultant eye surgeon at Stoke Mandeville Hospital, in the UK.
"Having no eye pigment would be like having a camera aperture with a transparent blade. You wouldn't be able to control the light getting in."
Dr Homer said that he only removes the pigment from the eye's surface.
"This is only around one third to one half as thick as the pigment at the back of the iris and has no medical significance," he said.
He also claimed patients would be less sensitive to light than those born with blue eyes. He reasoned that brown-eyed people have more pigment in the other areas of their eyeballs, and most of it will be left untouched.
"We run tests for 15 different safety examination procedures. We run the tests before and after the treatment, and the following day, and the following weeks, and the following months and the following three months.
"Thus far we have no evidence of any injury."
Testing in Mexico
Dr Homer originally worked as an entertainment lawyer in Los Angeles, but gave up full-time practice in the mid-1990s to study biology at Stanford University in California.
He said he filed his first patent for the laser treatment in 2001. But it was not until 2004 that he began carrying out experiments on animals at a hospital facility.
To fund his research he used his own savings, attracted investments from venture capital funds and secured a government grant. Dr Homer said he has raised $2.5m to date.
Dr Homer said his treatment only removes pigment from the eyeball's surface
Tests on humans initially involved cadavers, and then moved on to live patients in Mexico in August 2010.
"From a regulatory perspective it is easier," Dr Homer said, "and I can speak Spanish fluently so I can closely monitor how everyone is doing."
Seventeen people have been treated so far. All are very short-sighted. They have been offered lens transplants in return for taking part.
Dr Homer said the work is checked by a board of ophthalmology experts to ensure it is up to standard.
The new funds will be used to complete safety trials with a further three people.
Stroma Medical then intends to raise a further $15m to manufacture hundreds of lasers and launch overseas - ideally within 18 months.
A US launch is planned in three years' time, because it takes longer to get regulatory approval there.
Stroma Medical believes the treatment will be popular; its survey of 2,500 people suggested 17% of Americans would want it if they knew it was completely safe. A further 35% would seriously consider it.
There is also evidence of a growing desire to alter eye colour overseas - a recent study in Singapore reported growing demand for cosmetic contact lenses.

23.Newer birth control pills again tied to blood clots
Reuters News2011年11月7日


A study out Monday adds to evidence that a newer type of birth control pill may carry a higher risk of blood clots than older versions.
The study, of 330,000 Israeli women, found that those who used birth control pills with the hormone drospirenone -- found in brand-names like Yaz and Yasmin -- were more likely than other Pill users to develop blood clots called venous thromboembolisms.
Overall, there were just over six cases of venous blood clots per 10,000 Pill users each year in the study. But the risk was 43 percent to 65 percent higher with drospirenone-containing pills, compared with older, so-called second- and third-generation pills.
That increased risk would translate to about eight to 10 clots per 10,000 women per year.
Venous thromboembolisms most commonly form in the leg veins, but can travel to the lungs, where they cause a pulmonary embolism.
It has long been known that women on the Pill have a small, although higher-than-average risk of blood clots. But recent studies have suggested the risk may be relatively higher with pills containing drospirenone -- which include Yaz, Yasmin, Beyaz and Safyral, along with their generic equivalents.
"It's important to remember that all oral contraceptives are associated with a risk of blood clots," said Dr. Susan Solymoss of McGill University in Montreal, who wrote an editorial published with the study in the Canadian Medical Association Journal.
She suggested that women who are considering their birth control options have an "open discussion" with their doctor on the risks and benefits of various contraceptives.
One key thing to consider, Solymoss said, is whether you have other risk factors for blood clots, like obesity or high blood pressure. It may make sense to avoid the Pill formulation with the highest clot risk.
Dr. Naomi Gronich, who led the new study, agreed.
Age is another factor, according to Gronich, of the Technion-Israel Institute of Technology in Haifa. In this study, she told Reuters Health in an email, blood clot risk gradually increased after the age of 25. (Women who are older than 35 and smoke -- another clot risk factor -- are already advised to avoid birth control pills in general.)
For any woman, avoiding birth control pills altogether is an option. However, Solymoss said, other contraceptives may not be as effective at preventing pregnancy. "And pregnancy is a bigger risk for blood clots," she pointed out.
For every 10,000 women who become pregnant in a year, about 20 will develop venous blood clots. That compares with the rate of six women per 10,000 among Pill users overall and three in 10,000 women who are not on the pill.
Earlier, industry-funded studies of Yasmin, Yaz and related pills had indicated no elevated risk versus other Pill formulations. But several studies since 2009 have linked the newer contraceptives to relatively higher blood clot risks.
Just last week, the U.S. Food and Drug Administration (FDA) released the latest update of its own investigation of the question.
Based on records for more than 800,000 U.S. women who used the Pill between 2001 and 2007, the agency found that the risk of blood clots was higher among those on drospirenone-containing pills.
The FDA said the risk translated into about 10 cases of blood clots for every 10,000 women using the newer pills in a year -- compared with six per 10,000 among women using older Pill versions.
The agency is set to discuss the issue at a meeting on December 8.
Bayer HealthCare, which makes Yaz, Yasmin, Beyaz and Safyral, said it was still reviewing the new study from Israel and could not comment on it.
But in an email to Reuters Health, Bayer pointed to its own post-marketing studies that have failed to turn up a heightened clot risk with drospirenone contraceptives versus older ones.
Drospirenone is a progestin, a synthetic version of the hormone progesterone.
The different "generations" of the Pill vary in which progestin they use. Second-generation pills contain the progestins levonorgestrel or norgestrel. Because they can cause side effects like acne and body-hair growth, the third-generation of progestins were developed in the 1980s to lower the odds of those problems.
But some studies later found that third-generation pills carried a higher blood clot risk than their predecessors -- suggesting that risk is influenced by the progestins in the formulation.
Yasmin arrived on the scene a decade ago. Its progestin, drospirenone, was different from older ones, which are derived from testosterone. And the "Yaz" products have been promoted as causing less weight gain and swelling than older-generation pills.
For women seeking birth control, Yaz and Beyaz can also be used to manage moderate acne or so-called premenstrual dysphoric disorder -- a severe form of PMS that causes physical symptoms and serious mood swings before a woman's period.
After its approval in 2006, Yaz quickly became the top-selling birth control pill in the U.S. -- though its sales have dropped off in the past couple years (partly because of generic competitors). Worldwide, Yaz and its sister pills had sales of about $1.07 billion in the first nine months of this year according to company financial statements.
For women who have already been using Yaz or related pills without a problem, there may be little reason to switch, according to both Solymoss and Gronich.
In this study, Gronich pointed out, blood clot risk was greatest in the first few months of use.
"A woman already on drospirenone for four months probably shouldn't be more worried than if she (were on) another second- or third-generation contraceptive," Gronich said.
SOURCE: bit.ly/qB3Mku CMAJ, online November 7, 2011.

24.平成22年(2010)医療施設(動態)調査・病院報告の概況

25.H5N1発生国および人での発症事例(2011年11月2日現在)

26.公知申請に係る事前評価が終了した適応外薬の保険適用について

27.プレスリリース

1) 遺伝子改変なしにクローンマウスの出生率を10倍高める技術を開発

2) NIH study finds stroke risk factors may lead to cognitive problems

3) NIH researchers design a light therapy that targets and destroys cancer cells in mice

4) FDA approves Erbitux to treat late-stage head and neck cancer

28.Other Topics

1) 地球接近の小惑星、NASAが撮影画像を公開

2) いまさら聞けない、SSLサーバ証明書とルート証明書の関係
ITmedia 2011年11月8日

※記事を読みたい方はご連絡下さい。PDFをお送りします。

3) TPPは「国論を二分する」ほどの問題ではない
大前 研一
Nikkei Business2011年11月8日

環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加をめぐり、民主党でも自民党でも反対論が根強いのをはじめ、農業関係者や医療関係者が「大反対」を訴えている。あたかも「国論を二分するかのような騒ぎ」になっているが、なぜそんな騒動になっているのか、私には理解できない。今回はTPP問題について考えてみたい。
そもそもTPPとは何なのか
 TPPの9カ国間交渉を主導する米通商代表部(USTR)のカーク代表は10月26日、「最終合意に向けた交渉は今後12カ月かける」との方針を明らかにした。また日本の参加については、「決断を待っている」と語った。
 TPP交渉に参加するかどうかは、米国ハワイで11月12、13日に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までにその態度を決めなければならないとされる。野田佳彦首相はこれまで国会などの答弁で参加に積極的な姿勢を見せており、これに反発の声が強まっている。
 しかし私は、「ちょっと待ってくれ」と言いたい。賛成論・反対論が入り乱れているが、TPPとはそもそも何なのか、誰も正確な定義をしていない。
 米国が突然TPP参加に積極的になってきた背景には雇用問題を抱えたオバマ政権の選挙対策という側面があるが、それが具体的にどういうことを意味するのか、まだ対外的に説明できる状況にはないと思われる。
TPP交渉参加国のそれぞれの「ねらい」は?
 一方の交渉参加国の側でもそれぞれにどんな思惑があるのか、日本は現時点で十分に理解しているとは思えない。「韓国、中国、インドなどが今後参加する」と予測する人もいるが、少なくとも今の時点では「様子見」を決め込んでいるようだ。
 お隣の韓国では先月の李明博大統領の訪米で決着したかに見えた対米FTA(二国間自由貿易協定)の国会承認をめぐって大混乱に陥っており、李大統領も対米FTAについてハワイのAPECサミットまでに決着をつけていないと「合わせる顔がない」ということになる。
 肝心の米国でも大統領に有利なTPPパッケージが出てくれば、"ねじれ議会"で共和党が反対にまわる可能性もある。要するに、いずれの国も今の段階では「どこまで真剣にやるのか」に関しては手探り、といった状況にあるように見える。
 下にTPP交渉参加国の現時点における「ねらい」を一覧にしてみた。


損得でもめるだけで戦略のない日本の「滑稽さ」
 TPPは、農産物を含む全製品の関税を原則撤廃し、金融や医療サービスなどの非関税障壁を取り除き、自由貿易を行うための協定である。2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国で発効した経済連携協定がもとになっている。
 そのシンガポールのねらいは「貿易ハブ機能の維持」「ASEANでの影響力」だ。また、日本の原発を輸入するベトナムは「中国依存からの脱却」だし、英連邦加盟国であるブルネイは「米国との関係維持」だ。その他の国々を見ても、それぞれ期待するところが違っていて、決して同じ理念の下に集まっているわけではない。
 ただ一つ言えることは、他の参加国には少なからず自国に有利な戦略的なねらいがあることだ。それに対して日本は、「交渉参加が自分たちにとって損か、得か」のレベルでもめているように見える。何とも「滑稽」な話ではないか。少なくとも日本がTPPに参加する以上は「何を達成したいのか」を明確にする必要がある。
 私にはそもそもTPPとは何なのか、かつての関税貿易一般協定(GATT)や世界貿易機関(WTO)の多国間協定ではできなかったことの何が可能になるのか、また経済連携協定(EPA)やFTAによる「二国間協定」ではできないことの何が可能になるのか、など分らないことだらけである。
 ただ一つ明らかなのは菅直人前首相が米国訪問の際、オバマ大統領から突如言われて、急に浮上してきた実体不明の(先方にとっての)政治課題である、ということだ。
日本のTPP論議に説得性も論理性も見いだせない
 米国側の窓口になっているのはUSTRというマイナーな役所である。これは今までの日米交渉でも米業界の利害丸出しの交渉をやってきた、お世辞にも上等とは言えない役所である。組織のしっかりとした国務省や商務省ではなく、USTRという役所の遺伝子を日本も少し研究した方がいい。
 失業率がいつまで経っても改善しないために来年の大統領選挙がますます厳しくなっているオバマ大統領の刹那的な利害(米国内での雇用創出)を表に出してごり押しする可能性がかなり高い、と私は見ている。
 それにしても日本の財界はおしなべて賛成意見を持っているようだ。私は今まで40年にもわたって経営コンサルタントとして企業のグローバル化を手伝ってきたが、貿易障壁があって経営戦略に支障を来した国はTPP交渉参加9カ国では一度もなかった。だから、これらの国とどんな障害をどのように取り除いていこうとしているのか、政府あるいは財界には明確に説明してもらいたい、と思っている。
 一方の反対派の多くは「情緒に流されているだけ」のように見える。私が日本でのTPP論議を冷ややかな目で見ているのは、そこに損得以外のいかなる説得性も論理性も見いだせないからだ。
米国がねらうのは「雇用の拡大」だが……
 貿易戦争においては得てして「ゼロサムゲーム」になる、と思われている。「米国の得は日本の損」ということである。しかし、それは消費者すなわち生活者から見れば得ということもあるわけで、誰の立場で何が問題なのかを賛成派・反対派の両サイドとも冷静に説明すべきだ。
 良質な農産物が安く入ってくるのに対して、業界は反対と言うだろうが、消費者は賛成だろう。仮に、「それが安全なものでない」と言うのなら、日本政府が食品衛生法などに基づいて取り締まればいいだけの話だし、消費者が不安なら買わなければいいだけの話である。
 つまり、交渉を始めたら最後、「奈落の底まで突き落とされるぞ!」という恐怖の物語はあまりにも主体性のない脅し、と映る。
 「滑稽」と言えば、TPP交渉参加国である米国もそうだ。米国がTPPでねらうのは「対アジア輸出の拡大」「自由貿易圏の拡大」だ。もちろん「その心は?」と問えば、米国内での雇用拡大である。
 しかし過去30年間、米国はこの手の貿易交渉の結果、貿易を拡大させたことがあったろうか? 雇用を増大させたことがあっただろうか? 私の記憶では一度もない。
日米繊維交渉とそのとき始まったバラまき
 カーター大統領時代、米国は日本にピーナッツ輸入の自由化を迫った。当然、千葉県の落花生農家は猛反対したが、結局は米国に押し切られた。
 しかし、それで米国から輸入したピーナッツによって、千葉県の落花生農家が壊滅状態になったかと言えば、そんなことはなかった。むしろ増えたのは中国からの輸入で、千葉県産の「八街(やちまた)の落花生」はトップブランドの地位を保っている。
 そのピーナツ戦争の前には実に15年以上にわたる日米繊維交渉があった。1970年に日本側で交渉に当たったのは宮澤喜一通産大臣であったが、当時は沖縄返還に関する密約の有無などをめぐってもめにもめ、結局、佐藤・ニクソン会談でも決裂している。その1年後に就任した田中角栄首相が米側の要求を丸飲みするかたちで決着したが、この時、怒る繊維業界に総額2000億円近い救済融資を行うことでなだめている。このバラまきがその後の日本の伝統的なお家芸となった。
 つまり、対外交渉の下手な政府は米国の言いなりとなるが、その被害者には税金で応分の負担をしましょう、というやり方を用いるのである。今回も野田首相は早速このお家芸を持ち出し、万一農家などに被害が及べば補償はしっかりやります、などと交渉の始まる前から「鎮静剤の散布」を提案している。
先頭を走る日本が叩かれ、気がつけば他国が台頭
 記憶しておくべきことは、繊維に関して交渉があまりにも長引いたために、日本の繊維産業は韓国や台湾に流れ、やがてインドネシアや中国に立地するに及んで、1972年に交渉が最終決着する頃には肝心の日本の輸出競争力そのものが喪失していた、ということだ。
 だから業界は補助金の「もらい得」となったかもしれないが、米国も交渉には勝利したが、国内産業の保護にはつながらなかった。その後、東アジアの繊維輸出国それぞれに対して、日本との交渉で見せたしつこさや粘りなどは消え失せ、衰退する米繊維産業自体が米国での政治力を失って、今では中国産の繊維製品の草刈り場となっている。
 その後のテレビ、鉄鋼、自動車、半導体などの産業も同様で、先頭を走っていた日本だけがバッシイングされたというパターンの始まりは日米繊維交渉だったのである。
 日本との交渉は政治的にうまみがある(雇用につながるかもしれないという期待がある)のでしっかりやるが、次の国が台頭してくる頃には米国側の当該産業界に強いロビー勢力が消えており、政治的に興味を失ってしまっている。こういうパターンはこの40年間、いっこうに変わっていない。
門戸開放までは熱心な米国
 もう一つ面白い現象がある。米国が門戸開放をした市場に当初の予定通り、米国企業が「進軍してきた」ケースはほとんどない、ということである。
 牛肉・オレンジも米国の圧力によって日本への輸入が自由化された。現在我々が「輸入牛肉」と聞いてイメージするのは、まずオーストラリア産のものである。米国の牛肉ではない。同様のことはオレンジでも、またサクランボでも言える。
 半導体に至っては日米で合意した「日本の使用量の20%は輸入品とします」という約束に沿って(米国からではなく)韓国から輸入する羽目になった。
 米国は軍・宇宙などの半導体が主力であるため、またインテル社やテキサス・インスツルメンツ社のように強いメーカーはすでに日本で生産していたため、日本が必要としている民生用の半導体を輸入することはできなかった。日本企業はやむを得ず韓国にノウハウを与えて無理に20%分の生産を委託し、「輸入実績」を作ろうとした。当時はこれが名案のように思われていたのだろうが、結局これが命取りとなって、世界最強を誇っていた日本の民生用半導体の主導権を韓国に奪われる悲惨な結果に終わっている。
 市場開放を迫った米国もフォローを怠り、自国の製品が輸出できていないと文句を言わなかった。交渉の10年後には日本の半導体産業自体が瀕死の重傷を負って貿易摩擦にはかすりもしない、というくらい弱体化させられていた。
 つまり米国は過去40年間、「輸入自由化を相手国に飲ませます。輸出の拡大によって米国の景気や雇用は改善します」と米国民に対して言い続けてきたが、結局のところは景気も雇用も改善したわけではなかった。
 米国は貿易相手国に門戸を開かせるまでは熱心だが、その後は続かない。いつも「漁夫の利」を得るのは他の国なのだ。これを「滑稽」と言わずして、何と言おう。
大企業は好調だが、国内景気は悪い米国
 こうした米国の問題は、「門戸を開く」役目を担うUSTRと「門戸開放後」を受け持つ米商務省の連携がうまくいっていないことに起因している。
 もっと正確に言うと、商務省や国務省は「もはや相手国に貿易を自由化させたところで米国内の雇用や経済が改善するわけはない」と諦めているのだ。だから日本が落花生や牛肉、オレンジの輸入を解禁しても、それをフォローアップすることがない。
 鉄鋼に至っては米国内のほとんどの製鉄メーカーが外資に買収され、今では米国政府に圧力をかける業界団体そのものがなくなっている。商務省はそのことを良く知っているのでUSTRと一緒に騒ぎ立てることに興味がないのだ。
 オバマ大統領は就任以来、一貫して雇用の改善を訴え続けてきた。オバマノミックスで数百万人の雇用が生まれるはずであった。しかし3年経って予算だけは使ったが、いっこうに雇用は上向かない。道路建設などのケインズ政策では短期的な雇用は伸びるが、米国企業の競争力がつくわけではない。米国の政治家は国際競争の土俵が同じになれば、米国企業は本質的に競争力を持っているので輸出が増えるはずだ、と考えている。
 しかし、これは19世紀の経済学者デイビット・リカードなどの頃の考え方で、21世紀の現在、競争力のある米国企業は世界に出かけていって生産し、販売している。米国から輸出しようなどと考えている米国の大企業は今ではほとんど残っていない。だからこそ、トップ500社の業績は好調で、国内の景気は悪い、という二極化が起っているのだ。
TPPでは米国の雇用も経済も改善しない
 オバマ大統領は来年の大統領選挙戦に向けた最後の道具として、TPPを強力に推進しようとしている。40年にも及ぶ日本との貿易交渉を勉強・反省することなく、また自国の有力企業の意見を聞くこともなく、古びたリカードの道具を持ち出し、栓抜き(かつてUSTR代表を務めていたカーラ・ヒルズ女史の言葉)を使ってボトルを次々に開けていく。
 そういう思惑で突如登場してきたのがTPPだと私は思っている。自分のイニシアチブでTPPが合意され、「米国に数百万の雇用が生まれることが期待できる!」と選挙期間中にワンフレーズ言えれば、彼は目的を達したことになる。
 だが、仮に日本がTPPに参加して環太平洋で自由貿易圏が確立したとしても、米国の雇用も経済もほとんど改善することはないだろうと私は見ている。肝心の米国企業にその気がないからである。つまり、米国の強い企業は世界の最適地で生産し、魅力ある市場で勝負している。「米国国内に雇用を創出しよう」などと考えている殊勝なグローバル企業はない。だからこそ、この期に及んでも米国企業は好決算、米国の景気や雇用は停滞という対照的な状況になっているのである。
 ところで、TPP交渉参加に強硬に反対している団体のひとつに日本医師会がある。日本医師会がまとめた「日本政府のTPP参加検討に対する問題提起―日本医師会の見解―」によれば、「医療レベルが低下する」「医療現場に市場原理が持ち込まれ、国民皆保険制度が崩壊する」といった内容を反対の根拠としているようだが、実は本音は別のところにあるのではないか。それは「外国人医師に市場を荒らされたくない」ということだろう。
医師会も農業団体も、もう少し冷静に
 これもナンセンスな話だ。外国人の医師が働いている欧州連合(EU)は国家資格の相互認証が契約されている。スペインで国語の教師をやっていた人はドイツに行ってスペイン語の教師ができる。医師や弁護士も同様である。TPPが国家資格の相互認証まで踏み込むのかどうか、実は米国の事情を考えれば、あり得ない。
 たとえば、医師の国家試験に関して、今回の交渉に熱心なチリの医師がスペイン系の多いカリフォルニアやフロリダで自由に開業できることを米国が許可するだろうか? 北米自由貿易協定(NAFTA)が発足して久しいが、カナダやメキシコの国家資格が米国で認められた、という話は聞かない。
 米国が欲しいのは雇用であって「市場開放」ではない。ましてやEU並みの国家資格の相互認証など米国はまったく考えてもいないだろう。米国が考えてもいないことを想定して煙幕を張り、日本が世界に誇り、世界がまた日本をうらやむ「国民皆保険」を人質にとって「それが崩壊してもいいのか!」と脅す医師会も、もう少し冷静になってもいいのではないか?
 日本に対して市場開放を迫る米国の農業も、オーストラリアと一本勝負すれば負ける。補助金のないオーストラリア農業は、補助金で支えられた米国農業よりも圧倒的に強いのだ。
 今回の9カ国メンバーにオーストラリアが入っているということは、「例外」を設けるに違いないというヒントでもある。医師会も農業団体も、「リラックス!」と言いたいところだ。
 ちなみに米国では、医師の5人に1人がインド人である。このインド人医師たちは、インド国内の医師免許のほかに、きちんと米国で医師免許を取得している。だから、日本でも同じようにすればいいだけの話だ。その国の法律に基づいて医師資格を取得し、その資格で仕事をするのなら誰にも責められるべきことではない。日本医師会の心配は「杞憂」と言っておこう。
反対派議員の顔に「票がほしい!」と書いてあるかのようだ
 今後、TPP交渉で各国首脳が論議し始めると、おそらく彼らは「どうしてこんな低レベルのことを話し合わなくてはならないのだ」と愕然とするのではないか。つまりそれほど現状のTPPは曖昧なものであり、基本的な認識のすり合わせからスタートしなければならないのである。
 したがって私は、「どうしてこの程度のものに対して大騒ぎで論争しなければならないのか」と不思議に思う。街頭に繰り出す議員たちの顔には、オバマ大統領と同じように「票が欲しい!」と書いてあるようで痛々しい。
 私は過去40年間、日米貿易戦争ともいうべきものをつぶさに見てきた。相手国に門戸を開かせた後、米国がきちんとフォローして輸出を拡大した試しがないことをよくよく承知している。米国が開けた扉から入ってくるのは、いつも中国や韓国などの企業である。
 日本が法外に高い関税を課しているコンニャクやコメなども安いに越したことはないが、それでも「販売価格が高いから」という理由で食べない、ということもない。
 政治家があれだけ無理をして関税および非関税障壁を敷いて国内産業をガッチリ守ってくれているのだが、そういう産業はおしなべて衰退している。これまた日米共に同じ結果になっているという笑えない話である。
TPP交渉は実体が不明のまま推移するだろう
 私の経験から言えることは、おそらく日米がTPPに参加したところで状況は何も大きく変わることはないだろう。日本は依然として巨大な政府債務を抱えたままだろうし、米国では雇用も経済も、そして世界市場しか見ない米国のグローバル企業の習性も、変わることはないだろう。
 TPP交渉は実体が不明のまま推移するだろうし、米国でさえも選挙の結果によっては熱が冷めるかも知れない。つまり、「賞味期限のある政治テーマ」ということだ。
 どちらにしても、わめき散らすほどの問題ではないし、国論を二分する価値があるテーマとも思えない。
◆大前 研一(おおまえ・けんいち)
1943年、福岡県に生まれる。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。以来ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を務める。
 2005年4月に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラム(ビジネスブレークスルー大学院大学)が開講、学長に就任。経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権の国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。
 著作に『さらばアメリカ』(小学館)、『新版「知の衰退」からいかに脱出するか?』(光文社知恵の森文庫)、『ロシア・ショック』(講談社)など多数がある。



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