スーパーサイズ・ミー - Wikipedia
『スーパーサイズ・ミー』(英: SUPER SIZE ME)は、2004年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画である。監督・出演はモーガン・スパーロック。
モーガン・スパーロック自身が一日に3回、30日間、マクドナルドのファストフードだけを食べ続けたらどうなるかを記録したものである。この間、健康のための運動はやめ、彼の身におこる身体的・精神的な影響について記録している。さらに、スパーロックはファストフード業界の社会的な影響を調査し、この業界が利益のために栄養を犠牲にしていることを明らかにした。
スパーロックは当時33歳、身長6フィート2インチ(188cm)、体重185.5ポンド(84.1kg)、体脂肪率11%、BMI指数23.2(正常値はアメリカでは19~25である)と、健康体で肥満ではない。30日後、体重は24.5ポンド(11.1kg)増え(13%増)、体脂肪率は18%になり(7ポイント増)、BMI指数も27(アメリカ基準では「標準以上」)、躁うつ、性欲減退、かなり深刻な肝臓の炎症を起こした。 といっても一日5000kcal(5Mcal、2.1MJ)をマクドナルドで摂った結果である。尋常でない食生活の結果とも言えよう。
スパーロックの実験の動機は、米国の保健福祉省長官も「蔓延している」と宣言するほどの米国社会の急速な肥満の増加にあり、これに呼応する形でマクドナルド社に対して起こされた訴訟にあった。これは肥満になった2人の少女が2002年11月におこした訴訟で、肥満の原因はマクドナルドの食品の取りすぎによるものだと主張した。この訴訟自体は因果関係が認められないとして裁判所に却下され、マクドナルド側の勝利に終わったものの、スパーロックはタバコ会社に対するのと同様の非難がファストフード業界にもあてはまるのではないかと指摘した。
映画はアメリカで2004年5月7日に公開され、全米興業収益のトップ10に2週間載るなど、ドキュメンタリー映画としては大変な成功を収めた。(最終的な収益は$29,529,368)アカデミー賞の優秀ドキュメンタリー映画部門にもノミネートされた。
[編集] スタッフ
- 監督兼被験者:モーガン・スパーロック(日本語吹き替え:大塚芳忠)
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
「マックアタック」を始めるにあたり、スパーロックは3人の医師による健康診断を受け、身体的には平均以上であるとのお墨付きをもらった。また1か月間を通じてこれら医師の診断を得るなどの協力を取り付けた。3人の医師は全員、実験について体へ望ましくない影響を与えるだろうと予測したが、それほど劇的な変化は無いだろうと述べた。さらに一人の医師は「人体には相当高い適応性」があるとも述べた。
リプトングリーンティー体重減少
スパーロックは1か月の実験を自宅そばのマンハッタンにあるマクドナルドで始めた。この地区には、0.6km²ごとに1店舗ずつマクドナルドがあるほど密集している。また、運動を制限するために移動する際にも、平均的なアメリカ人の一日の歩行距離と同じ2500歩までに抑えるためタクシーを多用することとなった。実験のルールは以下の通り:
- 一日に3回マクドナルドの商品を食べること
- マクドナルドのメニューの全てを一度は食べること
- メニューに無いものを買わないこと
- 「スーパーサイズ」メニューを勧められたら、必ず「スーパーサイズ」にすること
実験2日目は初めてスーパーサイズを食べることとなった。また、「マックしゃっくり」、「マックぶくぶく」、「マック屁」などとふざけながらも、「マック腹痛」、嘔吐などにみまわれた。
5日後、体重は5kg増えた。程なくうつ状態になることも頻繁になりはじめ、マクドナルド食品が無いと倦怠感、頭痛を覚えるようになった。医師の一人は中毒症状だと説明した。その月の終わりには体重は24.5ポンド(11.1kg)増の210ポンド(95.2kg)まで増えた。解毒メニューで9kgの減量に5ヶ月、残りの2kgに9ヶ月(合計14ヶ月)かかった。
1か月間マクドナルドだけしか食べられなかったため、スパーロックはビタミン剤を全く摂取しなかった(「マクドナルドは『マックドラッグ(薬)』を売る必要があるね」と彼は話した)。
スパーロックのガールフレンド、アレクサンドラ・ジャミサンはスパーロックの精力および性欲が減退していると証言した。ガールフレンドは菜食主義のシェフでもあり、1か月間の実験終了後にはすぐに「解毒」する必要があるとアドバイスした。また、この時点では1か月間の高脂肪・高カロリーを完遂できるか定かでなく、友人と家族たちは懸念を表明し始めた。
20日目頃、動悸を感じるようになった。内科医ダリル・アイザックに相談したところ、スパーロックの肝臓が「レバーペースト状になり始めている」と述べ、深刻な心疾患を避けるためにすぐにでも実験を中止するよう助言した。医師は、映画『リービング・ラスベガス』で同じ位の期間でアルコール依存症になり死に至った主人公とスパーロックを比較の対象に挙げて説明した。この警告にも関わらず、スパーロックは実験の継続を決めた。後にインタビューの中で、スパーロックは弟に実験をやめた方がいいか相談した際に「モーガン、みんなは一生の間このメシを食い続けるんだぜ」と言われたのに影響を受けたと語った。
スパーロックは結局30日目まで実験を続け、9回スーパーサイズを注文した。そのうち5回はテキサス州での注文であった。いくつかの異論はあるものの、この州は全米で最も肥満の多い都市を複数抱えているとの調査もある。3人の医師全員がスパーロックの健康状態の悪化の度合に驚きの声を上げた。
誰が、転倒予防
この実験の終了後、スパーロックは正常時の体重84kgに戻るのに数ヶ月を要した。ガールフレンドのアレックスは「解毒食」で回復を助けた。この解毒食を元に『ザ・グレイト・アメリカン・デトックス・ダイエット[1]』(ISBN 1-4050-7771-9)という本を書いた。
[編集] その他
スパーロックの実験と並行して、映画の中ではアメリカの肥満率の高さの要因となった様々なものについてインタビューと考察を行っている。例えば、アメリカの多くの学校で健康的な食品が与えられていない点、広告によって青少年を「引きずりこむ」点、マクドナルドが子ども向けの遊び場やピエロを配置している点、食品会社側の投資家利益追求の姿勢と顧客側の健康問題との関係など。
エリック・シュローサーのファストフードが世界を食いつくす[2]と同様、この映画はファストフード業界の負の側面に焦点をあてたものである。少なくともこの映画中での実験結果から言えることは、ファストフード以外を食べない生活を長く続けることは、健康上の大きな問題となるということを示している。しかしながら、運動を減らすことによる影響を示したものではないため、この点が実験全体を左右しているのではないかとする批判もある。
サンダンス映画祭での上映の後、マクドナルド社はスーパーサイズのオプションを廃止し、いつものメニューに加えてより健康的なメニューの提供を開始すると発表した。なお、マクドナルド社はこの決定はこの映画とは関係ないとしている。
オーストラリアでは、ドキュメンタリー映画としては史上最高の興業成績を挙げた。公開からの2週間、オーストラリア・マクドナルド社は推計140万ドルを費やす大規模なネガティブ・キャンペーンを張った。オーストラリアの全ネットワーク局で流されたテレビコマーシャルの中で、CEOのガイ・ルッソはこの映画について「暴飲暴食を決め込んだ人の話だ」と述べ、スパーロックが主張するファストフードの不健康さについて賛意を表明することで、その影響を最小限にとどめようとした。ルッソはニュース・リミテッドの取材に対し、マクドナルド社がこのような主張に対し手を打てなかったことに顧客は驚いているかもしれないと述べた。マクドナルド社は、スーパーサイズ・ミーの上映館全てで30秒間のスポットCMを入れ、映画館� �この映画を観た客全員に上映終了後に従業員がリンゴを配れるよう手配した。
この映画のオーストラリアでの配給元であるデンディ・フィルムスの共同経営支配人、アンドリュー・マッキーは、この広告キャンペーンが実際には映画に観客の足を向かわせるようになったと述べた。
カントリー歌手のグレッチェン・ウィルソンは自身の世界ツアー地全てでマクドナルドを食べて応援すると発表した。
ミズーリ州の減量センター
イギリスでは、マクドナルド社は映画館の予告編に短い広告を出し、その映画への反論サイト www.supersizeme-thedebate.co.uk
の宣伝を行った。広告のメッセージはシンプルに「我々が同意していない点と同意している点をご覧ください」[3]というものだった。
[編集] 疑義
映画の公開以降、いくつかの疑義が示されている。まずスパーロックが映画の中で「事実」として示した情報について、信頼のおける情報源を提供しようとしない点。例えば、平均的なアメリカ人の一日の歩行距離2500歩といった情報など。この実験では空腹でない時でも一日に3回食事を摂ることが強制となっている点。成人の1日奨励摂取量である2000~2500キロカロリーの2~3倍を摂取し、運動を行わなかった点(上で述べた通り平均的なアメリカ人も運動しないと彼は言っているが、そのソースは示されていない)。さらに、肝臓障害とこの実験との因果関係は明らかにされておらず、性生活の減退についても悪影響があると自らがそう考えていた意識が反映された(いわゆる反偽薬効果)自然な結果である可能性がある。これらの問題 点をクリアにしようとする試みはなされていない。
また批判の一方で、マクドナルドの商品の生産、普及、広告活動といった活動によって、食品エネルギー摂取を高度に維持できるようになっている点についても消極的ながら認めている。
[編集] 社会的・文化的な側面
英語の「super size me」という語句は、近年では「big and useless」(大きくて無意味)の代名詞となっている。例えば、ニューヨーク・タイムズの記事には「(中小企業でさえ質重視の企業が多いのに)大企業ではまだ建築物に対して『スーパーサイズミー』アプローチが支配的だ」との用法があった[4]。さらに、完全に人為的な文化(例えばコカコーラ、マクドナルドなど)を代表させる用法として使われている。
「マック言葉」[5]とも呼べる独特の語用法は、マクドナルドが大衆文化に与えている影響の証拠である。これらの接頭辞として頭に「Mc」の付く語用法には、他にもMcJob(マックジョブ)、McMansion(マックマンション)、McDojo(マック道場)などがある。
[編集] 類似の実験(反論)
- オランダの新聞(nl:Algemeen Dagblad)紙の記者ヴィム・メイが同様の実験を行っている。この映画との相違点はメニューからの選択方法にあり、メイはより慎重な選択を行った。結果は、30日の実験を始める前と比べて少なくとも健康状態は変わらなかった。6.5kg減量し、血圧などその他の面では向上が見られた。
- アメリカのニュージャージー州では、ドキュメンタリー映画製作者のスコット・キャズウェルが同様の実験を行った。この実験の結果は、「ブローリング・フォー・モーガン」[6]というタイトルの映画で見られる)。
- ニューハンプシャー州ケンジントンのソソ・ワーリーは、「ミー・アンド・ミッキー・D」[7]という題名で、マクドナルドによるダイエット実験を独立映画として制作した。映画は30日間の実験の様子を追っている。彼女はマクドナルドで一日2000キロカロリー食べ、体重を79.4kgから63.0kgに落とした。
- ノースカロライナ州ローリー在住のメラブ・モーガンは、摂取量を一日1400キロカロリーに制限した、90日間マクドナルド漬けのダイエットを行い、16.8kgを減量した。デトロイト・フリー・プレスの記事
- 日本のイラストレーター、田口たつみは「1ケ月マクドナルド生活」を公開している。
これらは短期間の実験であり、またマクドナルドの食品に限らず、同じものを食べ続けるのは不健康であるということに注意しなければならない。
また、日本マクドナルドは米マクドナルドとは別法人であるため、使用する素材や成分が異なる点には留意するべきである。 米国と違い、日本ではトランス脂肪酸の規制が行われておらず、日本マクドナルドでも自主規制を行っていない。
- ^ 英: The Great American Detox Diet
- ^ 原題:英: Fast Food Nation、後に「ファーストフード・ネイション」として映画化された。
- ^ 英: See what we disagree with. See what we agree with.
- ^
- ^ 英: McWords
- ^ 英: Bowling for Morgan
- ^ 英: Me and Mickey D
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